Editor’s Voice
世界の美しい布が見れる場所。

インドが好きで、何度か旅行にも行きました。人生変えたいとかガンジス川で泳ぎたいとかいう大きな野望は特になく、ただサリーやカンタなど、インドのかわいい手仕事の布が欲しかったから。遠目で見て、近寄って見て、触って、そのたびに新たな発見があるのも大きな魅力です。世界各地の民族が紡ぐトライバルな布にはかつてイームズやジラードも夢中になったといいますが、近年またそのブームが到来しているようです。今日本でいい布を見るなら？　まだまだ勉強中ではありますが、私なりに考えた、素敵な布が見れる場所をいくつかご紹介します。

ライトイヤーズ
巻頭でも特集した、布好きの間で話題のショップ。福岡・博多にありますが、東京中の目利きがここに集まるといいます。世界最高峰のラグと名高いベニワレン、細かい手刺繍が施されたインドのカンタを中心に、世界中の手仕事の布が揃います。写真は今年の東京展。http://www.light-years.jp

キコ
オーナー夫妻のデザインへの造詣と抜群のセンス、フットワークの軽さで、ここにしかないインド、フィンランド、イラン、チュニジア…世界各地の布を集めたショップ。カンタは90年代にイッセイ・ミヤケのディレクターだった経験をもつスタイリスト、ジニー・マッカーサー・コガがディレクションしたものを中心に、展示会も開催しています。写真は、下に敷いたのも、上に乗っているモケモケも、フィンランドのヴィンテージラグ。http://www.quico.jp

岩立フォークテキスタイルミュージアム
踊り出さんばかりの女性とか、ひょうきんな顔をした動物だとか「希少な白いカンタの中でも、こんなに朗らかな図柄のものを持っているのは、世界でうちがいちばんじゃないですかね」とスタッフ。今年の夏に開催されていた「白の刺子 カンターベンガルでの出会い」展も、2014年〈日本民藝館〉での「カンタと刺子ーベンガル地方と東北地方の針仕事」展もすごくよかった！　布ひとつひとつの細部に見入ってしまいました。次回展は11月30日からの「衣の原点 ー南太平洋諸島の樹皮布、編布など」。オーナーの岩立広子さんが書かれた書籍『インド 大地の布』も、ミュージアムが所蔵する逸品の写真がたくさん載っていて楽しいし、勉強になります。http://www.iwatate-hiroko.com

静岡市立芹沢銈介美術館
民藝運動にも参加した染織家、芹沢銈介の作品を所蔵する美術館。写真ののれんも芹沢の作品ですが、この人がアジア、アメリカ、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニア…世界中を旅して集めた布のコレクションがすごい。なんという目利き、そしてなんという物好き、と訪れるたびに感心してしまいます。ちょうど11月25日まで「のれん—芹沢銈介の原点—」展、12月12日から「芹沢銈介の収集-手仕事の世界地図-」展を開催するそうです。ぜひ。http://www.seribi.jp

ハーマンミラーストア
オランダ、ダンスキナ社のラグを今年からマハラムが販売することになり、丸の内のハーマンミラーで取り扱いがあります。糸の質感から編み方まですべてを、デザイナーのパトリシア・ウルキオラがディレクションしたいわゆるデザイナーもの、ではありますが、触れてみたくなる手仕事の美しさは世界の民藝と一緒ですね。https://www.hermanmiller.co.jp

クヴァドラ ショールーム
世界の名だたるデザイナーと恊働するデンマークのテキスタイルブランドから2016年、ミナ ペルホネンの皆川 明によるデザインが発表されました。中でも特集内「カーテン考」でもご紹介した《Flost Garden》の影が美しかった…！　カーテンに開眼しました。手仕事の布ではないけれど、皆川さんらしい手描きのタッチが上手に出ているなあと思ったので、こちらもご紹介させていただきます。https://kvadrat.jp

長くなりました。ああ、もう布のことって、書き出したら止まらない…！