忘れられない、チョコレートケーキ。 From Editors No. 76
From Editors 1
忘れられない、チョコレートケーキ。
歩くのが楽しい街。京都に遊びに行ったことはこれまで何度もあったけれど、いわゆる観光名所ばかりを巡っていた過去の自分に「勿体無い!」と伝えたくなりました。だって、街を歩いてみると、「こんな新しい店があったのか」という発見ばかりだったから。
「そろそろ、京都に行きたくなる」というテーマの京都特集。街中、西陣、大山崎とさまざまなエリアに足を運びましたが、ロケハンも兼ねてと取材の合間に訪れた、河原町にある『喫茶 百景』が印象的でした。本誌のさんぽ部スペシャル(p82)でも紹介しているので、ぜひ。
京都というと、昔ながらの喫茶店が多いイメージかもしれません。でもここは、昨年の夏にオープンしたばかり、深夜1時まで営業している夜喫茶。階段を登って、さあお店に入ろうと思ったら、扉が閉まっている。「入りづらい店だったらどうしよう」と少し緊張しながら、ドアノブをそうっと引いてみると、店内の照明は暗くて、なんだかお洒落。メニューを見て直感で頼んだチョコレートケーキは、キャラメルのような上品な甘さがあってとても好みの味でした。よかった、この店すごく居心地がいい。だけど、印象的だったのはケーキだけじゃなくて、店を出たあとの出来事があったから。次の取材があるからと、足早に店を出て階段を降りていたら、後ろから「すみません!」と声をかけられたんです。
「忘れ物したっけ?」と振り向くと、「この店どうやって知ってくださったんですか?」と店主の方から質問が。お店を訪ねることになった経緯を簡単に説明すると、「そうなんですね、すごく嬉しいです。昨年オープンしたばかりですが、京都に立ち寄る機会があったらまたぜひ遊びに来てください」と笑顔で見送ってくれました。たった数十分しか滞在しなかった私をわざわざ追いかけて来てくれて、しかもこんな優しい言葉をかけてくれるなんて。京都に“一見さんお断り”というイメージを抱いていた自分が少し恥ずかしくなりました。
今回の特集では、『喫茶 百景』以外にもたくさんの魅力的な店を紹介しています。今の京都に足を運んでみたら、新しい発見があるかもしれません。本誌を持ってぜひ、京都へ。