人生の先輩の言葉を聞く。 編集部こぼれ話
取材こぼれ話
2017年5月20日
人生の先輩の言葉を聞く。
直接会ったことも、話したこともないけれど、本の中で出合った人生の先輩たちの言葉や物語、表現された気持ちや情景がずっと忘れられないこと、ありますよね。今号の本の特集では、書物好きの方々が心の中で大切にしているそんな宝物を教えていただきました。
エッセイストの平松洋子さんは、石牟礼道子さんが『苦海浄土』に記された言葉の、神話のような力強さを。ノンフィクション作家の梯久美子さんは、メキシコの女性画家・フリーダ・カーロが身に着けていた服の写真を撮る写真家・石内都さんの素晴らしさを。
担当者である私も、愛読した神谷美恵子さん、リンドバーグ夫人や田辺聖子さんの言葉を思い出しました。
田辺聖子さんの夫がガンで亡くなった最期の死の床。そこで、作家業や夫の介護で疲れ果てた田辺さんに向かって夫・カモカのおっちゃんがかけた〈かわいそに。ワシは あんたの。味方やで〉という短い言葉。人が人に捧げる共感と慈しみ、最上の愛の表現。人生の伴走者への温かい応援の一言として忘れがたいものです(『残花亭日暦』より)。
この特集がそんな言葉や本との再会、再発見のきっかになってくれたら、うれしく思います。
担当 N.F