「水平線の彼方に憧れて」 編集部こぼれ話
取材こぼれ話
2019年1月19日
水平線の彼方に憧れて
3月号のカッコいい先輩特集のお話しを伺いに、鎌倉のお宅に作家の角野栄子さんを訪ねました。スタジオジブリのアニメとなった『魔女の宅急便』、童話『ちいさなおばけアッチコッチソッチ』シリーズなどで知られる童話作家です。昨年、児童文学のノーベル賞とも言われる「国際アンデルセン賞/作家賞」を受賞したばかり。取材の前に、受賞を記念して行われた講演にでかけてみました。
そこで角野さんが語ったのは、水平線の彼方への憧れについてでした。今から60年ほど前のこと、結婚したばかりの角野さんは、夫とブラジルに2年間暮らしました。ブラジルへと向かう2か月に及んだ長い長い航海。毎日見える景色は、ともかく水平線ばかり。でも、角野さんを含めた船客は毎日飽きることなく、水平線を眺めていたそうです。「水平線の向こうに何が見えるのか、どんな風景が現れるか。そのときのわくわくする気持ちはいまも忘れられないです」。大海原の彼方の見えない世界を想像する、ここではないどこかへの憧れを持ち続ける。それが作家としての角野さんの原動力だったとのこと。この1月で84歳を迎えた作家の言葉に、ついちぢこまってしまいがちな背中を押していただいた気持ちでした。
作家としての原点を語ってくださった本誌のインタビューもぜひお読みください。
編集F