From Editors No. 777 フロム エディターズ
From Editors 1
1枚の旗がもたらしてくれた、
カッコいい部屋づくりのスタート地点。
紹介した部屋部屋すべてに、編集者としての愛情はあるけれど、振り返ってみて個人的に好きな居住空間の傾向があることを今回あらためて知ることができた。
2009年に紹介した彫刻家のRicky SwallowとペインターのLesley Vanceが住むSilver Lakeの家もそのひとつ。そして、今回取材した陶芸家の岩田圭介さん、立体造形作家の岩田美智子さんの家も新たに加わったお気に入りのひとつだ。2つの居住空間の共通点は、カーテン代わりに、そしてインスタレーションとして室内に飾られる旗。イメージは、秘密基地みたいな空間。
カッコいい部屋を見れば見るほど、そこに行き着くまでの苦労とこだわりを聞けば聞くほど、いま住んでいる小さな賃貸マンションに帰っては、とても真似することができない、と凹んでいた日々。でも、自分がイメージするような空間のひな形みたいなものが、ようやく見えてきた。そして、そういう空間に住みたいという欲求が持ち上がってきた。
7年目を作り終え、そろそろ重い腰をあげようと思っている。
読者のみなさんにとっても、自分らしい空間を知るためのきっかけとなる1冊になってくれれば。
From Editors 2
家の話より猫の話?
取材に無駄話はありません。
「居住空間学」の取材なので、もちろん、家のあれこれについて聞きます。飼っているペットの話を聞きに行くわけではありません。でも、犬とか猫の話で盛り上がっている時間もけっこうあります。無駄話? いえいえ、住み手の人となりを知ることができる、とても貴重な時間です。
取材で家を訪ね続けて、個人的には18年ほどになるのですが、なかでも「居住空間学」の取材って、特殊だなあ、と、改めて思います。住み手の哲学というか、住まいに対する思いや「在り方」を知りたいと思うので、家のことと同じくらい、住んでいる「人」のことが知りたい。その人のこと、まるごとなんて到底、知れないわけですが、「大事にしていること」、ひとつだけでいいから、知りたい。だから、住み手が話し出す話なら、家と関係のないような旅の話やコーヒーの話、ぬいぐるみの話にも、じっと耳を澄ますような気持ちで、いつもいます。