自然が教えてくれる不思議と神秘とリアル。 From Editors No.946
From EditorsNo.946 フロム エディターズ
自然が教えてくれる不思議と神秘とリアル。
畑に出て土に触れる。夏は少しひんやり、冬はしっとり温かい。収穫した野菜の土を払い、その形を愛でる。しっかと伝わる手触り。手から伝わる温度やテクスチャーが、こんなに大事なことなんだ、と改めて実感する。コロナ禍は、心だけでなく、身体的にも窮屈が溜まっていたんだな〜。
農業特集は、2009年以来二度目となる。あの頃は、収穫する喜びを全面に押し出した本づくりをした。そんな時代だったんだ、と思う。
翻って2021年、見渡してみると友人知人たちが畑や田んぼで汗を流していると聞くことが多くなった。彼らの話を聞いていると、「実がならなくても失敗じゃないんだよね、緑がそこにある幸せ」「ときに枯らしてしまうこともあるし、苦労して育てた実を動物たちにかっさらわれてしまうこともある。腹は立つけど、おいしく食べて欲しいとも思う。うまくいかないってことも受けれる余裕ができる」「リモートワークやDX、便利になったけど、ハンドルの余りのようなものがなくなってるんだと実感する。それを補完してくれるのが野良仕事」これらの言葉が、すーっと染み込んでくるのは、時代なのか、人間としての本能なのか。
12年ぶりの農業特集、心の中で育つ木に豊かなものを実らせてくれる本になったと思います。
●杉江宣洋(本誌担当編集)