楽園タヒチで訪れたちょっとした“奇跡”。これぞ旅の醍醐味か。 From Editors No.845
From EditorsNo.845 フロム エディターズ
楽園タヒチで訪れた
ちょっとした“奇跡”。
これぞ旅の醍醐味か。
表紙の話をします。この写真にはちょっとした幸運が関わっていたので。
タヒチ取材の最終日、この日のガイドをホテルで待っていたのですが、別のグループの前に現れたガイドは、キャップにサングラス、タンクトップにショートパンツのかわいいお姉さん。「楽しそう♪」と少し胸を躍らせた私たちの前にほどなく現れたのは、腰巻き一丁の半裸で裸足という姿で現れたテワイさんでした。正直「トんだコスプレ兄さんが来てしまったぞ」とテンション下がるのを隠せなかったのですが、話を聞くとそうではなかった。海外からの移住者も多いタヒチにおいて、テワイさんはタヒチ人の両親を持つ生粋のタヒチアン。観光客のためのサービスではなく、大地や自然の力をより強く感じるために、常にその格好で暮らしているとのこと。体には彼の一族を象徴するトーテムのタトゥが彫られており、ツアーの途中にも、私たちの存在を忘れたように山に語りかけたりしていました。
そんなテワイさんが「特別な場所に案内する」といって連れて行ってくれたのが、タヒチ島内陸部の深い森。生い茂る樹木が作る狭いトンネル、道無き道を進んで行った先にあったのが、表紙になった場所でした。私たちを先導したテワイさんが水辺に立つ凛とした姿、樹々の深い緑と空の青を取り込んだ滝壺の水の色を見た時、フォトグラファーは自然とカメラを構え、私は「楽園を見つけた」と思えたのでした。
私たちのガイドがテワイさんでなかったら、この場所には辿り着けなかったかもしれないし、タヒチアンの自然観を肌で感じることができなかったかもしれない。それは運が良かったという話ですが、ちょっと大げさに“奇跡”とも呼びたくなるような。
そして、こんな“奇跡”がときどき起こるのが旅のいちばんの魅力なのだと再確認したのでした。