改めて知りたくなった、欲しくなった、イームズ、ネルソン、ジラード、未来の家具。 From Editors No.883
From EditorsNo.883 フロム エディターズ
改めて知りたくなった、欲しくなった、
イームズ、ネルソン、ジラード、未来の家具。
デイミアン・チャゼル監督、ライアン・ゴズリング主演の映画『ファースト・マン』(2月8日公開予定)を試写会で観てきた。人類史上はじめて月に降り立った宇宙飛行士アームストロング船長をメインキャラクターに、1960年代に行われたNASAのプロジェクトが描かれる作品だ。
この映画の中で、たびたび出てくるのが、イームズのシェルチェア。人類が宇宙へ、未来へ志向した、まさにその時代。人々の暮らしの中に広まっていたのがイームズらを中心に、未来を思考して作られたミッドセンチュリーの家具たちだったことが見てとれる。70年代80年代、宇宙への志向が弱まっていく時期を同じくして、ミッドセンチュリーの家具たちにも斜陽期が訪れる。その後、大衆的な家具(イームズたちはそれこそを志向もしていたのだが)という人々の認識に対して、デザイン、そしてアートの視点から新たな価値を見出したのが、本誌巻頭で取材をしているマーク・マクドナルドだ。
それを経て、30代以上の方々ならご存知だろうか、1995年ブルータス『イームズ 未来の家具』を皮切りに、日本国内で空前のミッドセンチュリーブームが到来したことを。大学生の自分にとって、未来の家具は、いつか買いたい憧れの家具となる。そして、ミッドセンチュリーの家具を知ることをきっかけに、プロダクトデザイン=新しい興味が喚起させられたのだった。北欧家具、日本のミッドセンチュリー、フレンチヴィンテージへ……。その原点は、やっぱりイームズ、ネルソン、ジラードらが作ったアメリカのミッドセンチュリー、と改めて思えたのが、この特集をつくる種。
特集・居住空間学で取材するたびに、いかにもメインです! と鎮座するのではなく、インテリアの一部に溶け込んでいる、ミッドセンチュリー家具を多数見てきたのが、水、そして肥料となって、この特集を作りたい、という大きな幹となったのです。
一緒に組んだのは、ブルータス編集部最年少の辻田。ミッドセンチュリーを初めて知る彼が、その家具に魅了され、虜となって、知識を増やしていく姿を見ていると、イームズ、ネルソン、ジラードらが作ったデザインの強さというものをあらためて感じる。
ブームのときに買ったことのある人。持っているけど、使ってない人。そもそも知らない人たちにも。全世代のために作った家具とデザインの特集『Mid-century in Our Life』。“あの”イスに座りながら、ぜひ。