マガジンワールド

Special Contents 読書における“無駄”は、本から得た世界の広がり。

「何か見つかればラッキー。本はそのくらいの気分で読むもの」と、博報堂ケトルのクリエイティブディレクターにして〈本屋B&B〉の運営に携わる嶋浩一郎さんは言います。ここでは、嶋さんが今まで出会った大いなる“無駄”たちをいくつか紹介。結論に直線的に辿り着くことだけが全てじゃない、寄り道をしながら自分で発見してきた愛すべき“無駄”たちなのです。


 
『ポラロイド伝説』
クリストファー・ボナノス/作 千葉敏生/訳

「ある部門には『雑多研究』(ミセレニアス・リサーチ)という正式名称が付けられていて、予算も決しておまけみたいなものではなかった」(p.73)
 

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あのスディーヴ・ジョブズに“国宝”とまで言わせた、天才創業者エドウィン・ランドとポラロイド社の歴史と逸話をまとめた一冊。「今ではグーグルも“無駄が大事”という哲学を持っているけど、それをはるか昔から企業戦略にしていたとは驚き。やっぱりいい仕事は無駄から生まれるんですね!」。実務教育出版/1,890円。


『pink』
岡崎京子

「それにマクビティのダイジェスティブ・クッキー! このクッキーにピーナツ・バターぬって バナナのうすぎりのせて食べると最高においしんだ・よーん」(p.61~62)

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OLとして働く傍ら、売春を繰り返す主人公のユミ。家ではワニを飼い、恋人のハルヲは小説家志望。愛と資本主義をテーマにした岡崎京子の代表作。「ユミが、私のワニも大好物だからとハルヲに勧めるこのクッキー。カンテサンスかエル・ブリか! って感じの組み合わせ。でも妙においしそう」。マガジンハウス/1,200円。



 
『ガガーリン』
ジェイミー・ドーラン、ピアーズ・ピゾニー/作 日暮雅通/訳

「その夜(中略)ガガーリンは、宇宙飛行士二号、つまり、礼儀を守ってはいるが沈んだ様子のゲルマン・チトフと、静かにビリヤードのゲームを楽しんだ」(p.184)

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人類初の宇宙飛行士の人生を、未公開書類や友人知人への取材から解き明かす。「男のドラマが味わえるけど、半沢直樹的サラリーマン人事の悲哀も学べる本。地球に帰還した夜、ガガーリンはスペア要員の宇宙飛行士とビリヤードする。誰かが決まれば誰かが落ちる。サラリーマン人生もまるで玉突き」。河出書房新社/2,520円。


『蠅の王』
ウイリアム・ゴールディング/作 平井正穂/訳
 

「ラーフは、眼鏡のレンズを前後にいろいろ動かしていたが、やがて、沈みかけた夕日の輝く白い像が、一片の朽ちた木の表面に定着した」(p.79)
 

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未来の大戦中、飛行機事故で無人島に漂着した24人の少年たち。極限下で内部闘争が始まり、人間の本質がむき出しに。「少年ピギーの眼鏡で火をおこせるとわかると彼の眼鏡を奪い合う闘争が始まるんだけど、物語を追いながら“眼鏡ってサバイバルに使えるのか!”と感心。マッチがなくても眼鏡っ子は大丈夫」。新潮文庫/740円。



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