Special Contents 読書入門9:国境のない文学に触れてみる。
Special Contents 読書入門9:国境のない文学に触れてみる。
作家の生まれた場所と住んでいる場所、小説の舞台と書いている言語が一致しているとは限らない。そんな“世界文学”。に触れてみようとすすめるのが、翻訳家の都甲幸治さんだ。ここでは、そのミックス具合がよくわかる4人の作品を紹介。彼らは、生きるための糧としての言葉を与えてくれる。
『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』
ジュノ・ディアス/著 都甲幸治、久保尚美/訳
「彼については、日本の影響を抜きには語れない。幼い頃に日本人の親友がいた縁もあり、日本文化への造詣がとても深いんです。本作でもドミニカ、アメリカ、日本という3つの国の文化が多様に入り乱れます」。新潮クレスト・ブックス/2,400円。
『熱帯雨林の彼方へ』
カレン・テイ・ヤマシタ/著 風間賢二/訳
「日系3世で、大学時代には日本にも暮らしたヤマシタ。その後ブラジルで結婚して作家となり本作を書きました。日本から来た青年を主人公にしたマジック・リアリズムの秀作。“国別”で捉えることなんてできません(笑)」。新潮社/2,400円。
『サマータイム、青年時代、少年時代』
J・M・クッツェー/著 くぼたのぞみ/訳
「ノーベル賞作家クッツェーは抽象的な作品も多いだけにわかりづらいという印象があるかもしれないけれど、自伝的な本作を読むと多くのことが見えてくる。南アでも英米でも疎外感を抱えて生きてきた人のようです」。インスクリプト/4,000円。
『鼻持ちならないガウチョ』
ロベルト・ボラーニョ/著 久野量一/訳
「カフカやボルヘスなど、敬愛する作家へのオマージュとして書かれた短編を収録。ボラーニョは何を読んでも全く外れがない本当に優れた作家。本作を書き終えた2週間後にまだ50歳で亡くなってしまったのが残念です」。白水社/1,900円。