Special Contents 森山大道のシゴト。
半世紀にも及ぶ森山大道の膨大な仕事。その経歴は決して順風に帆を上げてきたものではなく葛藤と苦闘の歴史でもありました。特集ではその業績を本人の回想とともに振り返りますが、Special Contentsではその中から時代ごとにピックアップし、かいつまんで紹介します。
|1968_|にっぽん劇場写真帖|
記念すべき最初の写真集であり、名作の誉れ高い一冊。大衆演劇やアングラ芝居、演歌歌手など芸能関係を中心に、熱海や横須賀での写真も。『俳句』という雑誌の寺山修司のエッセイの連載に合わせて開始した大衆演劇の撮影だったが打ち切りになり、それを山岸章二の元に持ち込み、『カメラ毎日』で続けられた。フリーランスになって4年余りでこれだけの充実した作品集を作れた事実に、当時の精力的な仕事ぶりが窺える。/室町書房
|1972_|記録|
『写真よさようなら』発表の後、自分を見つめ直すため「日常で撮ったものをすぐ焼いて、近くの人たちに手渡しで見せるという最小限のメディアを」と模索する中で始めた個人写真誌。オイルショックによる印刷費の高騰などもあり1973年に発行した5号をもって一時休刊となったが、2006年になって33年ぶりに復活。以後、制作を継続中。「今や自分にとってのライフライン。撮ってすぐ出せると、撮る気持ちが熱くなる」
|1982_|光と影|
『写真時代』に連載したシリーズを中心にまとめたもの。1826年に世界で初めて写真術を発明したニセフォール・ニエプスの写真に触発され、適正露出などの概念を忌避してきた森山が写真の始原としての「光と影」を意識した作品。葉っぱやタイヤ、ゴミバケツ、猫や路地などありふれたものを題材にとり、ブレ・ボケの抑えた画面で原点回帰的なアプローチを行う。この作品集で日本写真協会年度賞を受賞し完全復帰へ踏み出した。/冬樹社
|1993_|Daido hysteric|
1980年代を通じて自らの写真のスタイルを改めて掴(つか)んだ森山大道が、90年代に入りアパレルブランドとのコラボレーションにより発表した3部作。1冊目はすべてタテ写真でモノを中心に、2冊目は東京で蠢(うごめ)く群衆の姿、3冊目は大阪の街を撮っており、いずれも300ページを超える大部で圧倒的な写真の量と密度を持つ。90年代以後の活動のトリガーとなった、ターニングポイントともいえる作品集。/ヒステリックグラマー
|2007_|ハワイ|
意外な組み合わせながら、ハワイは森山にとって「ずっとひっかかっていて、いつか撮ってみたい」場所の一つだったという。当然ながら明るく陽気なリゾート地としての島のイメージとは大きく異なるが、これまでの激しい「森山大道スタイル」は鳴りを潜め、どこか懐かしさも漂う、森山自身「不思議な作品」と語る独特の空気感を持つ作品集となった。その表現がまた新しいステージに入ったことを感じさせる写真集。/月曜社