愛用品と育てたいもの。 Special Contents BRUTUS No.855
Special Contents 愛用品と育てたいもの。
ある人は、それを一生使い続けたいと言い、またある人は、物とのストーリーを懐旧の念で語り始める。決して間に合わせではなく、長年培った審美眼で選び抜き、馴染んだ愛用品。すなわちそれは、自分に似合うもの。これから育てていきたい品も、またしかり。
photo/Yoshio Kato edit&text/Yu-ka Matsumoto, Keiichiro Miyata
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上田義彦
●写真家
うえだ・よしひこ/1957年兵庫県生まれ。主な代表作に、ネイティブアメリカンの聖なる森を捉えた『QUINAULT』、舞踏家・天児牛大を撮影した『AMAGATSU』などがある。
「ライカのM3は、常にカバンに入れて毎日持ち歩いています。僕は8×10の大型カメラと、この35㎜の2種類しか使いません。その両極端が自分には心地いいんですよ。ロロ・ピアーナのジャケットは、十数年前にスエードを購入し、着古してしまったので、3年ほど前から同型のウールのものに。長年冬の旅のお供にしています。村田眼鏡に出会ったのは二十数年前。売り物ではないと断られたんですが、では作れませんか? と作れる職人さんを探してもらい久しぶりに作っていただいたものです。黄色鼈甲が手に入らないのと、それをツルに巻いていく技術が難しくもう作れないそうです。一つは使いすぎて経年変化で折れてしまって。今使っているのは、亡くなられた先代がご子息に託して僕に譲っていただいた貴重な品。この時計はフランク・ミュラーの初期のモデルで20年ぐらい愛用してます。一度旅先でなくしかけたことがあって、その時の喪失感は忘れられません。大切な存在だと気づかされた出来事です」
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斉藤久夫
●TUBE代表
さいとう・ひさお/1945年東京都生まれ。大学を中退し渡米。メンズファッションを学び、72年に企画会社デュプロマンを設立。79年にTUBEをスタート。
「グレーフランネルのパンツが好きで、50年ほど愛用してます。中でもカルロ・バルベラというイタリアの生地メーカーのフランネルは、霜降り具合が申し分なく、30年近くこの生地でパンツを作って穿いています(奥から20年前、15年前、10年前のもの)。四角い時計は、ロンドンのアンティークショップで購入したオーデマ ピゲ。丸型は、1940~50年代のパテック フィリップのカラトラバ。これは80年代にロンドンのマーケットで。昔は、こんな掘り出し物がゴロゴロありました。イギリスのTROW MILLという廃業してしまった生地メーカーのチェックのツイードを昔買い付けて、10年以上ストック。コートは10年ほど前に作ったものですが、この生地で秋にジャケットを作って着ます。白シャツは僕の定番。これはボブ・ディランが雑誌で着ているのを見て刺激を受け、それをベースに作ってみたタブカラーのシャツ。これにネクタイを締めてこれから着ようかと(秋にH ビューティ&ユースで販売予定)」
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宮原秀晃
●Scyeパタンナー
みやはら・ひであき/1966年東京都生まれ。文化服装学院卒業後、2000年からデザイナーの日高久代氏とともにScyeをスタート。8月に初の路面店を千駄ヶ谷にオープン。
「ここ数年、とにかく細いリングが気に入っています。これは、アームデザインルームのもので、2000年頃に、繊研新聞の小笠原拓郎さんの紹介で出会いました。ここまで繊細なデザインでも決して曲がったりしないのがいいんです。デザイナー自ら、とことん叩いて彫金している変態的なこだわりも好きです。90年代後半から愛用しているのが、このKirk Originals Londonの眼鏡。イギリス滞在中にサングラスとして購入したんですが、今は老眼鏡として。黒縁のセルフレームは時代を問いませんからね。パターンを引く時も、字を読む時にも欠かせません。以前ツルが折れてしまった時は、ロンドンのお店まで持っていき、直してもらったほどです。ロレックスのオイスターパーペチュアルデイデイトは、亡くなった父から譲り受けた大切な時計です。スペイン語表記のデイト表示と金無垢のイヤラシさが気に入っています。でも、まだ自分には似合わないかもしれません。一緒に年を重ねていきたい品です」