危険な本屋大賞2017 Special Contents BRUTUS No.861
Special Contents 危険な本屋大賞2017
異色書店3店舗に「2017年一番危なかった本」を尋ねました。webでは、そのうちの1店舗、「歌舞伎町ブックセンター」の大賞・佳作をご紹介。
歌舞伎町ブックセンター
無関心の危険さを拭い去る、愛を題材にした3冊。
東京屈指の歓楽街に2017年10月に開業。「愛」をテーマに選書し、店主は元・カリスマホストの手塚マキさん、また書店員をホストが務めるなど、話題の新顔だ。
「本は人間をつなぐツールです。歌舞伎町が危ないという印象は、カオスな街だから。逆に集まった人間が書物を介して知り合えば、ダイバーシティになり得るんです」。カフェ併設の書店創業の理由を話す。
「『LGBTを読みとく』を読んで“差別しない気持ち”だけでは足りないと思った。“レズ”が実は蔑称であることなど無知や先入観を知識で補う必要があるんです」。真の相互理解に本は欠かせないと手塚さん。多くの人に「知らないこと」の危険性を自覚してほしいから、あえて歌舞伎町で、愛をテーマにした本を扱う。
『LGBTを読みとく
─クィア・スタディーズ入門』
森山至貴/著
「この本を通して、メディアなどで取り上げられるLGBTという言葉が、実はセクシュアルマイノリティのほんの一握りの姿しか表していないことを思い知らされます」。多様な性を知る方法を学ぶ一冊。ちくま新書/800円。
『声をかける』
高石宏輔/著
クラブや路上で女性をナンパし、肉体関係を重ね続ける物語の主人公。「褒められる行為ではないかもしれないけど、たとえ傷ついても、他者との関わりの中でしか人は自己を知れないと再認識しました」。晶文社/1,700円。
『家族最後の日』
植本一子/著
母との絶縁、義弟の自殺、夫の癌。 著者の懸命な日常の記録。「赤裸々な語り口が胸に迫ります。勇気をもって己をさらけ出すことが、結局は他者の理解にもつながるのでは、と改めて思いました」。太田出版/1,700円。
●かぶきちょうブックセンター/東京都新宿区歌舞伎町2-28-14☎03・6380・2259。11時〜翌5時。無休。現役ホストの接客は、土曜・日曜の15時〜17時。それ以外の時間帯は、本への豊富な知識とホスピタリティに溢れたスタッフが選書の相談に乗ってくれる。