スタイリスト・伊賀大介が語る、衣装で見せるリアリティ論。 Special Contents BRUTUS No.927
Special Contents スタイリスト・伊賀大介が語る、衣装で見せるリアリティ論。
監督・グレタ・ガーウィグ『レディ・バード』
甘すぎないコーディネートが彼女たちの普通。
「見事な制服の着崩し(ギプス込みの!)をはじめとした、超・自然体かつポップなスタイリング。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』でも、ジョーとローリーが衣装を交換し2人のつながりを表現していたのも見事でした」。悩める高校生だったグレタ・ガーウィグ自身の自伝的作品。’17米。
監督・マイク・ミルズ『20センチュリー・ウーマン』
これぞというバンドTの使い方にやられました。
「異なる世代を表す女性たちの衣装も良かったですが、主人公の少年が着ているトーキング・ヘッズのTシャツはそれじゃないといけない理由がちゃんと複数ある。迂闊に使われると時代錯誤になりがちなロゴや看板も彼は使い方をわかっているなと思いました」。自身の母をテーマに、1979年という転換期を振り返る。’16米。
監督・スパイク・ジョーンズ『her/世界でひとつの彼女』
引き算のルールで近未来感を出した手腕に脱帽。
「エキストラにデニムとキャップとネクタイの着用を禁止し、襟の小さなシャツを着せて近未来感を出したというのは見事なアイデア! AIの彼女に自分と同じ風景を見せようと、ポケットを底上げするために留めた金色の安全ピンもスタイリングとして効いてます」。人口知能型OSと人間との恋のゆくえを綴る。’13米。
監督・オリヴィア・ワイルド『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
クラスタではなく、個々の個性が生きる衣装。
「パーティシーンは全員のキャラクターが服に表れていて素晴らしかった。また、昔なら男性に当てがわれていた役を女性が演じているんですが、彼女がフリンジのジャケットにデニムを合わせた男性的な格好なのも今っぽいですよね」。青春を取り戻そうと奮闘する真面目系女子高生の友情を描く。’19米。全国公開中。