Special Contents ワタシの愛器、語らせてもらいます。
トーストとごはん。おいしい朝食にありつくためには、これらをいかに美味しくつくるかだろう。料理にこだわりのある人々が薦める、トースト&ごはんのための「愛器」について、語ってもらいました。
トースター
朝一番のトーストは、
遠火の網で軽やかに。
遠火の網で軽やかに。
渡辺有子
●料理家
記憶に残る最高のトーストは、学生時代、焚き火に立てかけて焼いたキャンプでのトースト。忘れられないあの思い出の味を再現してくれたのが、〈金網つじ〉の《手編み手付きセラミック付焼き網》。10年以上愛用しているお気に入りの調理道具です。改めて、直火で焼くとトーストは格段においしくなるのだなぁと。しかもこの網、下に付属したセラミックが良い仕事をしてくれるのです。遠赤効果でまるで炭で焼いたような焼き上がりになり、トースターとは一味違う香ばしさに。
食パンは断然、角食派です。寝起きに食す、しっとり滑らかな食感が大好きなんです。この網で焼くと、角食ならではの魅力をしっかりキープしつつ、表面はカリッと香ばしい。この軽やかな食感もポイント。焼き網は、朝トーストに最適の道具です。
食パンは断然、角食派です。寝起きに食す、しっとり滑らかな食感が大好きなんです。この網で焼くと、角食ならではの魅力をしっかりキープしつつ、表面はカリッと香ばしい。この軽やかな食感もポイント。焼き網は、朝トーストに最適の道具です。
わたなべ・ゆうこ/素材の味を生かしたシンプルな料理が人気。季節を大切にした丁寧な暮らし、センスあるライフスタイルでも注目を集め著書も多数。今月より新しく料理教室をスタート。
パンを焼くために買った
素焼きの土器、焙烙。
素焼きの土器、焙烙。
日野明子
●スタジオ木瓜(ぼけ)代表
これ、土器なんです。焙烙(ほうろく)と呼ばれる素焼きの煎り鍋で、作っているのは茨城県真壁町にある横田製陶所の横田安さん。自ら田んぼの土を掘ってロクロで形成、薪窯で焼く、という昔ながらの手法で作られています。3年ほど前にその存在を知り、作家を訪問。この焙烙を見た時から、パン焼きに最適! と思い購入しました。
いつも食べているドーム型のライ麦パンを2切れのせ、弱火でじわりじわりと焼きます。5分くらいかかるけれど、その時間がまたいい。焼き網のようにパン屑が下に落ちることはないし、熱の伝わり方がゆるやかなので、このまま食卓に持っていけば保温にもなります。水洗い不可、油も入れられないけれど、今の世の中、いろいろ兼用で使えるものが多い中、「パンしか焼かない道具」というのも武骨でいいと思っています。
いつも食べているドーム型のライ麦パンを2切れのせ、弱火でじわりじわりと焼きます。5分くらいかかるけれど、その時間がまたいい。焼き網のようにパン屑が下に落ちることはないし、熱の伝わり方がゆるやかなので、このまま食卓に持っていけば保温にもなります。水洗い不可、油も入れられないけれど、今の世の中、いろいろ兼用で使えるものが多い中、「パンしか焼かない道具」というのも武骨でいいと思っています。
ひの・あきこ/工業デザイナー・秋岡芳夫の授業を受け、1999年スタジオ木瓜を設立。百貨店やショップと作家・産地をつなぐ問屋業を中心に、生活用具の展示会や企画アドバイスなどを行っている。
ご飯鍋
工夫して使うのが良い、
〈長谷製陶〉伊賀焼の土鍋。
〈長谷製陶〉伊賀焼の土鍋。
平松洋子
●エッセイスト
これまで数々の土鍋を試してきましたが、ここ10年はもっぱら〈長谷製陶〉伊賀焼の《かまどさん》。長年愛用の3合炊きに、1年半ほど前から1合炊きも加わりました。ご飯は、米粒が対流に乗りポコポコと動くことでふっくら炊き上がるのですが、この土鍋は、対流を促す丸みを帯びた理想のカーブ。内蓋付きで圧力がかかり、2つの気穴が余計な蒸気を逃がしながらお米をむちっと炊き上げます。良質な生活食器をたくさん作ってきた伊賀焼の土鍋は、とても頑丈。良い土鍋というのは一言では語り得ません。カーブの在り方、造形、厚みなどの総合的な要素に加え、自宅コンロの熱量との相性もある。火力の環境やクセを見つけ、火加減や時間を調整しながら使うといいですね。そうやって、鍋を自分のモノにしていくのも楽しさの一つだと思います。
ひらまつ・ようこ/『買えない味』で第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。食文化と暮らしの関わりをテーマに執筆活動を行い著書多数。新著は小川洋子共著『洋子さんの本棚』(集英社)。
フランスの万能鍋、ストウブは
ご飯鍋としても優秀。
ご飯鍋としても優秀。
渡辺康啓
●料理家
フランスの鋳物ホーロー製の鍋、ストウブは、何を作ってもおいしくなる、大好きな調理道具。もう10年近く、ご飯を炊くのもストウブです。使っているのは、20㎝のピコ・ココット。1合からでも炊けるけれど、1度にたくさん炊く方がおいしいので、炊く時は4合炊いて、残りは冷凍しています。
炊飯器は見た目が耐えられないから持っていない、ということもあるけれど、鍋炊きの方が早く炊けるしおいしい。ストウブで炊く場合、僕の炊き方は「蓋開け」方式。強火で沸騰したら蓋を開け、しゃもじで全体を混ぜます。表面をならしてから蓋を閉めて弱火で16分、また蓋を開け、全体的にざくざく混ぜて水分を飛ばしてから蒸らし10分。昔は「一度火にかけたら蓋を開けるな」が鉄則と思っていたけれど、この方がむらなくふっくら炊けておすすめです。
炊飯器は見た目が耐えられないから持っていない、ということもあるけれど、鍋炊きの方が早く炊けるしおいしい。ストウブで炊く場合、僕の炊き方は「蓋開け」方式。強火で沸騰したら蓋を開け、しゃもじで全体を混ぜます。表面をならしてから蓋を閉めて弱火で16分、また蓋を開け、全体的にざくざく混ぜて水分を飛ばしてから蒸らし10分。昔は「一度火にかけたら蓋を開けるな」が鉄則と思っていたけれど、この方がむらなくふっくら炊けておすすめです。
わたなべ・やすひろ/1980年鳥取県生まれ。2007年に料理家として独立。東京・二子玉川にスタジオを構え、料理教室をメインに活動。おいしく「美しい」料理が人気。著書に『果物料理』等がある。