マガジンワールド

From Editors No. 759 フロム エディターズ

From Editors 1

『赤毛のアン』の島で、ロブスターを食べてオーガニック化に貢献って?

島の名産、ロブスターにむしゃぶりつくライターM(左)と、ロブスターの逆襲に遭うフォトグラファーI(右)。

今回、カナダ東部、セント・ローレンス湾に浮かぶプリンス・エドワード島へ取材に行ってきました。ジャガイモとロブスターが名産の島ですが、ルーシー・モード・モンゴメリの小説『赤毛のアン』の舞台となった島と言った方が、ピンとくる方も多いのではないでしょうか。

この島では、名産のジャガイモを大規模に単一栽培する農家がほとんどでしたが、最近、州政府が島の農業をできるだけオーガニック化したいと、コスト面でのサポートを始めたため、小規模ながらも多品種をオーガニック栽培する農家が増えていると聞き、取材に向かいました。

オーガニック化に取り組んでいる農家は若い世代が多く、活気があります。彼らとつながりを持つ若いシェフたちは、島で収穫されるオーガニック食材にこだわり、レストランは人気を博していました。島外からもわざわざ食べにくる客も多く、島の重要な観光資源にもなっています。

一方、もう一つの名産ロブスターですが、島の周辺、至る所にいい漁場があり、プリプリのロブスターが安く食べることができ、こちらも重要な島の観光資源。なんとマクドナルドにご当地メニュー、ロブスターバーガーがあるくらいです。

島を取材していると大量のロブスターの殻の山をよく見かけました。殻を処理しきれないほどの量のロブスターが食べられているのかと思ったら、実はこれは堆肥にするために集められていたもの。ロブスターの殻が島の農業のオーガニック化に役立っていることを知りました。

そこで、取材スタッフのフォトグラファーIとライターMは、オーガニック化に少しでも貢献しなければと言い訳しながら、ロブスターアレルギーで食べることができないかわいそうな編集Sの前で、思い切りロブスターにかぶりつくのでした。

●芝崎信明(本誌担当編集)


From Editors 2

おいしい自然派、とは人の話でもあります。

北海道余市のワイナリー「ドメーヌ・タカヒコ」の曽我貴彦さん。自園でたった一人、雑草を抜く作業を続ける6月某日に。

もちろん「おいしい」といっても基準は人それぞれ。「自然派」という言葉にも、こうでなければ、という定義はありません。だからこの「おいしい自然派」は、何か唯一の正解を指すのではなく、あるものからどれを選ぶか、という話です。

たとえば生産者では、収穫量が減ったり、より多くの手間や労力がかかっても、あえて農薬や化学肥料を減らす、あるいは使わない方法を選ぶ人がいます。「その土地をもっと表現したい」、「子孫になるべくよい自然環境を残したい」「おいしいから」など理由も十人十色で、つくり手はそれぞれに考えてつくる。食べ手もここに何かを感じ、やはり考えて食べる。そこでは一方向ではない、やり取りが生まれることもあるでしょう。

今回の特集では、日本各地の野菜、米、ワイン、チーズ、調味料などから、そうして考えて食べるきっかけになりそうなものも紹介します。それぞれ規模は小さいですが、ひときわ個性は強く、その土地や気候、製法、そして何よりつくり手と、多くのストーリーがみっちりと詰まっています。単に味の話だけでなく、おいしいものには、もっと可能性がある。「自然派」も、その一つではないでしょうか。

●渡辺泰介(本誌担当編集)


ブルータス No. 759

おいしい自然派(オーガニック)

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ブルータス No. 759 —『おいしい自然派(オーガニック)』

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