From Editors No. 769 フロム エディターズ
From Editors 1
抗生物質を飲むような読書より、
心が健康になるような読書を。
私が初めて何かを感じ学んだ本と言えば(ベタですが)レオ=レオニの描いた名作絵本『スイミー』でした。人とは違う個性があれば、いつか大事な役割を務めることができるんだ。そう読み取った幼稚園の頃の僕は、なにかと個性的であることを目標として幼少期を過ごしました。「スイミー」からは、みんなで力を合わせることの大事さだったり、いろいろな読み解き方ができると思います。けど、それは読んだ人が勝手に感じとり、自分の糧にすればいい。規定されない読み方こそが読書の愉しみだと、改めてそう思っています。
今回の特集にはいろいろな本読みの方々が登場します。彼らは「愛されるため」や「幸せな結婚をするため」や「出世するため」の本を紹介してくれるわけではありません。むしろ「嫌われたって大丈夫」だったり「恋愛や結婚に何度失敗したって大丈夫」だったり「就職しなくても大丈夫」だって思える本を紹介してくれています。でもそれは決して慰めのための本ではないのです。それは、生き方には多様性があることを知るための、いやそんな大げさなことじゃなく、もやもやとしたココロを軽くして一歩前へと歩みを進めさせてくれる本。
この年末年始は、身近な目標へとダイレクトに辿り着くための読書よりも、今を受け入れ未来を楽しむための読書の時間にあててみてはいかがでしょうか。
From Editors 2
本をたくさん読むことは、
自分に味方をつけること。
「帰る場所があるから大丈夫」をテーマに選書したのは、文筆家で『暮しの手帖』編集長の松浦弥太郎さん。3冊すべてが1,000ページを越えるマンガの大著で、自分の立ち返るべき場所が確認できるのだそうです。年齢を重ねて賢くなると、チャレンジを忘れてしまったり、自分を出さなくなるのだけど、レンガのような厚みを持った3冊は大事な原点を教えてくれるのだとか。松浦さんにとって、帰るべき場所のひとつは本棚にあるのです。
本に付いた付箋も、心の拠り所になるのかも知れません。ちょっとだけ気分が落ち込んだり、悩みごとで気持ちがざわざわしたとき、その場所を開けば読んだときに感じた気づきや癒しを思い出すことができる、心の拠り所。もちろん、心を軽くする1行を含んだ本は、誰にでも効く万能薬ではありません。読み手だけの“味方”です。
本はひとりで読むものですが、決して孤独にならないのは、自分だけの味方が増えていくからなのかも知れません。あなたの本棚にも、たくさんの味方が並びますように。