From Editors No. 802 フロム エディターズ
From Editors 1
いくつになっても
キャンプが楽しい理由。
小学校低学年から大学生までボーイスカウトに所属していました。ボーイスカウトというのは、夏の野営がなによりのイベント。常日頃から練習しているロープ結びだったり炊事だったりは、夏の野営でどれだけ他の班員に己の技能を証明するかだったりもします。森の中でキャンプに適した平地を探し、重いテントをなんとか立ち上げ、固形燃料無しで火を熾し、焦がさず飯盒炊爨をこなし……そんなキャンプを経験してきた自分にとっては、今のキャンプをめぐる環境はなんて素晴らしい、と思ってしまうことひとしお。ストレスの無いキャンプ場と、ハイスペックなギアの数々。おかげでキャンプはとても身近なアクティビティとなりました。でも一方で、もっと高揚感にあふれるキャンプをしてみたいと感じることも。というわけで、ひさしぶりの今回のキャンプ特集では、すこしだけ背伸びをした、人もうらやむキャンプを集めてみました。
ちなみにこの取材でもさまざまな場所でテント出張をしてきましたが、私のキャンプでの個人的な悦びとは、テントに戻って寝床に入り、仰向けになって目を瞑り、うとうとしかけるその瞬間。闇と、森と、テントと、寝床との境目が曖昧になり、月の明るさや虫の鳴き声や草の擦れ合う音などがテントの薄い皮膜を越えて五感に訴えてくる、その瞬間。それは、30年以上前にボーイスカウトの野営で初めて感じた時も、今回訪れた沖縄の無人島でも、インドのグランピングリゾートでも変わらない悦びでもあります。
オトナになっても、自然の雄大さや神秘さに目を見張る感性を持ち続けていたいもの。キャンプはそのことを、今でも私に教えてくれるのです。
From Editors 2
キャンプに
何を持っていくか、
何を食べるか。
道具ばかり揃えてキャンプにはいっこうに行かない人がいますが、かくいう私もその1人。今回も、キャンプ号に関わらずフィールドには一度も足を踏み入れないまま特集を終えましたが道具愛はそのままアウトドア愛のひとつのカタチですね。そういえばアンアン在籍時代、使わないのにマスカラにとても詳しくなってしまい女性に嫌がられたこともありました。
さて、今回のキャンプ道具カタログはアイテム別ではなく、使用シーンにわけて紹介することにしてみました。例えば、「SET A TENT(テントまわり)」「MAKE LUNCH(昼食作り)」「ENJOY AFTER-DARK(暗くなってから)」などといった具合に。3年前のキャンプ特集以後に登場した新しいキャンプ道具もたくさん掲載していますが、これだけキャンプが注目される昨今では、いろいろと選択肢も増えており自分のスタイルを鑑みた上で何を選ぶか、センスが問われているような気がします。今回は中目黒の「バンブーシュート」に勤める甲斐一彦さんに監修してもらいながら、クラシカル趣味のアウトドアではなく、ソリッドで少し尖ったアイテムを中心に紹介することにしました。大自然で映えるカラフルなアウトドアウェアを選ぶのではなく、<south2 west8>の黒いアウターをあえて選ぶ。そんな “キャンプスタイル” の模索が今年のギアカタログの裏テーマでもあります。今回掲載した道具やウェアを眺めるだけでもいまのキャンプはこうなのか、という驚きに満ちたものになっているはずです。
さて、もうひとつ担当した企画<小島聖のジョン・ミューア・トレイル、20日間の献立表>を紹介します。こちらは昨年6月に女優の小島聖さんとその友人がカリフォルニアのジョン・ミューア・トレイル(以下JMT)を20日間かけて歩いた記録です。JMTはナチュラリストとしてアメリカの国立自然公園の父とも呼ばれる偉人、ジョン・ミューアの功績を讃えて作られた全長340kmのロングトレイルです。以前、ブルータスでも松浦弥太郎さんがJMTを歩く記事を紹介したことがありますが、今回は女性のふたり旅ということもあり、道中の食事を細やかに記録しており、またその食事がロングトレイルの途上とは思えないほどバラエティに富んでいたので今回はそこにフォーカスして、これまでにないJMTでのキャンプの魅力を紹介しています。アメリカのロングトレイルを踏破した稀有な体験については小島さん自身が執筆。長文はほとんど書いたことがないと謙遜していましたが、その豊かな感情表現と細やかな描写は、まるで未踏の地を旅したような気分にもなりました。「歩くことも料理することも特別なことではなく日常に寄り添ってある」。そんなアメリカのロングトレイルの魅力を誌面で追体験してみてください。