画家の絵画鑑賞術に、目からウロコです。 From Editors No.848
From EditorsNo.848 フロム エディターズ
画家の絵画鑑賞術に、目からウロコです。
いきなり反省しますが、今回の特集を担当して、これまで自分がいかに漫然と、絵を見ていたのかがわかりました。巨大な絵画など新しい体験に誘ってくれる絵があればその迫力がもたらす感動に身を委ねるし、宗教画や歴史画を見れば主題やストーリーを思い出し、近代絵画を見る時は背景のムーブメントに照らし合わせる。見て、感じて、パネルやキャプションを読みつつ自分の知識と照らし合わせる、以上。これ、わりと一般的な見方かと思います。でも、山口晃画伯の目は違います。描く側の人の目で、何が描かれているか、ではなく、どう描かれているかを見る。近づいたり離れたり、いろんな角度から見たり片目で見たり。画家がどう描いたかを追体験するかのように見る。そして、約100点の絵のひとつひとつに、時には詩のように、時には謎かけのように、時には種明かしのように、言葉を紡ぐ。まるで、それを読む私たちも画家の目を持ち、追体験できるかのようです。絵の中で続いて行く空間の奥行きや、重ねた絵の具の透明性など、本物の絵を見ないと感じられない、つまり残念ながら雑誌の図版でお伝えするのにも限界があるような話も頻発。がぜんその絵が見たくなってしまうちょっとマジカルな絵画譚。ぜひこの1冊で山口ワールドを体験して、実際に絵画鑑賞の旅にでかけてみてください。
●︎︎︎草野裕紀子(本誌担当編集)