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人生、残された時間はどれくらい? From Editors No.849

From EditorsNo.849 フロム エディターズ

人生、残された時間はどれくらい?

映画、芸能、音楽、文学、芸術、ジャーナリズム。それぞれの分野で“巨人”と呼ばれ、現在も活躍している80代の人生モノローグはどれも面白いです。終戦により国体が一夜にして変わり、物のない時代を知恵で生き抜いた。戦後の復興期に青春時代を過ごし、日本の経済成長と共に歩んできた人生は、T型フォードからiPhoneまで使いこなした人たち、とインタビュアーの野村訓市さんが書いていましたが、これほど変化に富んだ時代もそうなかったかと思います。そして随分と長い時間を生き抜いてきたわけです。

時代も異なれば持って生まれた才も違います。なにせ彼らは“天才”。80sたちの話は決して真似できるものではないけど何かしら学ぶものがあるはずです。多くの80sたちが生まれた1930年代と2017年の今はくるっとまわってどこかで結びついてはいないか。小林亜星さんが「戦争が始まる前って大体退廃的になる」と言っていましたが、果たしていまはどうでしょうか。以前、高橋源一郎さんがほかのメディアで語っていた言葉を思い出しました。戦後を生きていると思っていたら、いつの間にか戦前を生きているのではないか、と。

80年=29.220日、80年=701,280時間。数値化されると残された人生の時間が途端に気になってくるものです。僕は今年でちょうど40歳になるので、これまでに大体14,600日、350、400時間も生きてきたことになります。この途方もない数字をあくせくと無為に過ごしてきた気もするし、大小様々な喜びがあったようにも思える。どちらにしても長かったし残りはたったの半分です。1年が過ぎていくスピード感覚は年々早くなり、浦島太郎のように気がついたら80歳になっている。そこには自分が80歳になったときに振り返るような人生があるのでしょうか。古今亭志ん生の落語に出てくる「ついでに生きているような人」という言葉を心の支えに生きてきた自分にとって、漠然と聞き流していた人生という言葉を、あらためて考えさせてくれる特集になりました。

 
●︎︎︎町田雄二(本誌担当編集)
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今回の特集で登場する15人の80sのひとり、横尾忠則さんの魅力について、みうらじゅんさんに語ってもらいました。こちらはみうらじゅんさんが中学生の頃に本屋でみて衝撃を受けたという、6人の横尾忠則がコラージュされたページ。ロックスターかと思った、とみうらさんは語ります。その後、あまりに横尾さんになりた過ぎて、思春期には「自分をなくしていく作業」をしてきたそうです。みうらさんらしい横尾さんへの愛があふれ、とても楽しい取材でした。ほかにも蒼井優さんが谷川俊太郎さんを、水道橋博士が田原総一朗さんを語るなど、憧れの先輩たちの偉業について、いま第一線で活躍する後輩たちが語ってくれています。
ブルータス No. 849

真似のできない人生訓。

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