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全てはモノ作りの現場から。 From Editors No.889

From EditorsNo.889 フロム エディターズ

全てはモノ作りの現場から。

この特集の裏テーマは“洋服の価値を知る”ということ。そのために、たくさんのモノ作りの現場を訪ねて作った今回の一冊。デザイナーのアトリエ、天然染料のラボ、型摺り染めの工房、テキスタイルメーカー、吊り編みを専業とする会社から、織機を作る会社まで。長いことファッションの担当をしていながら、現場に行ってみると知らないことばかりだった。どんな服であれ、携わった作り手の思いがあるんです。日本の地方都市には、家族経営の小さい工房や素材作りをしている会社があり、世界屈指の技術が継承されていることを目の当たりにしました。そこで働く人たちは、いま世の中で何が起こり、流行っているのかよく知っているし、情報が早いんです。誰よりも早く、サンプルを見ていますし当然のことかもしれませんね。出来上がってくるものは、美しいものばかりでした。

洋服を衣料として捉えれば、作られた理由も売られる方法も様々。自分たちが扱ってきたのは、その中でも人を幸せにする、「目的を持って作られた服(©︎COMOLIデザイナー小森啓二郎さん)」だと思います。そして、作られた物が、着る人たちに届くまでの流通・販売の過程も大切だし、情報を担うPRや私たちも、きちんと伝える義務があることを再認識しました。この世の中では洋服に限らず、物が“捨てるほど”作られています。その中で何を選ぶか、消費者はとっても賢くてシビアになっていると思います。だから、みんな厳選された情報を欲しているし、“なんとなく”洋服を買うことも、ほぼなくなったんじゃないでしょうか?

私が入る前、ブルータスのSTYLE BOOKに「職人、高くていいもの」(2010-11AW)という特集があり、個人的に大好きでした。手仕事を中心とした物作りを取材した一冊なんですが、その続編を作りたいと思い続けてきたんです。でも、同じような構成では多くを語れない時代だし、他にも伝えるべきことがあると気付きました。ぜひ、本誌特集内「ブルータス繊維新聞」をご一読いただければと思います。

●鮎川隆史(本誌担当編集)
BRUTUS 889号:From Editors
世界でも屈指の技術を誇る、和歌山にあるジャージ編み工場。その奥に眠る古い機械は、主に部品取り用だという。これらの機械を作る会社が時代とともに廃業していくので、辞めると聞けば、引き取りに行くこともあるという。技術も機械も継承する人が求められる。


ブルータス No. 889

服はあるのに、着たいものがない?

713円 — 2019.03.15
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ブルータス No. 889 —『服はあるのに、着たいものがない?』

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