謎の多さが、特集の深さに。「曜変天目」一点突破です。 From Editors No.891
From EditorsNo.891 フロム エディターズ
謎の多さが、特集の深さに。
「曜変天目」一点突破です。
2月に発売した特集「会田誠の死ぬまでにこの目で見たい日本の絵100」を担当して、限られたページ数のなかに100以上の作品をどう詰め込むかということに、ウンウン頭を悩ませていた頃。編集長より「次は曜変天目で特集を!」との命を受けました。
曜変天目。銀色の斑文とそれを包むような虹色の光彩が魅力というか、魔力を放つ世にも不思議な茶碗です。世界に3碗しか現存せず、そのすべてが日本にあり国宝指定。1つでもなかなか目にすることができない名品が、3碗同時期に公開されるという奇跡的な機会到来ということで、これを特集するのはBRUTUSの使命でもあります。うん。
ただ「100の絵」から「3つの茶碗」へということで、今度は3つしかないもので特集1冊作れるのかしらという悩みが浮上。「ちょっと時間をください」と一度棚上げさせてもらったのですが、今回の特集構成・執筆を担当してくれたライターの橋本麻里さんのレクチャーを受け、少し勉強しただけであっさり悩み解消。なにせ曜変天目は、その由来も、製法も、3つしか残ってない理由も、謎多き茶碗なのです。謎が多いということは、「掘れる」ということ。そして、3碗といっても、それぞれの伝来のなかで背負ってきた物語の違いがあることも知り。1冊特集ができる確証を得たため、曜変でGO!とあいなりました。BRUTUSがどれだけ掘れているか、ぜひ誌面で確認してください。
●中西 剛(本誌担当編集)