真のスニーカーヘッズは、履いて然るべし。 From Editors No.894
From EditorsNo.894 フロム エディターズ
真のスニーカーヘッズは、履いて然るべし。
特集を作っていた約2ヶ月半の間、嫌というほどスニーカーを見てきました。すれ違う人の足元をついつい見てしまったり、買い物に行ってもスニーカーばかり目に入る、ちょっとした職業病のような状態に……。スニーカーヘッズたちがプレミアム価格を払っても買いたい流行りの一足から、マニア垂涎もののヴィンテージアイテムまで色々目にしましたが、何と言っても、履きこまれたスニーカーが一番かっこいい、ということに気がつきました。
「超ニッチコレクターの偏愛収集録」という企画で、3人の局所的なマニアを取材。彼らは、五万とあるスニーカーの中からごく一部に強く魅せられた変態的なコレクターたちで、その愛し方も並々ならぬものがありました。そんな3人に共通していたのが、ただ収集しているのではなく、あくまで“履いて楽しんでいる”という点です。ファッションアイテムやスポーツギアとしてスニーカーを集めている彼らこそ、真のスニーカーヘッズだと僕は思います。3人のとっておきのコレクションたちを、ぜひ誌面でお楽しみください。
リセールサイトで高額で取引されるスニーカーが増え、汚したくないからと履くのを惜しんでいる人も少なくないはず。またコレクターの中には、鑑賞して楽しむ人もいると聞きます。もちろん、それはそれでしっかりとした趣味ですし悪いとは思いません。けれど同時に、“履物”として生まれてきたスニーカーを履いてあげないのは何とも不便だとも思います。トム・サックスは「スニーカーは単なる道具だ。死ぬまで履くべし。雨の日に履くのを恐れるのは的外れだし、作り手にとっては傷つく行為でもある。ルール違反だよ」と言いました。スニーカーが一番輝く場所は、コレクションケースの中ではなく、きっと僕たちの足元です。誰しもお気に入りの一足をボロボロになるまで履き続けた時代があったと思います。この一冊が、その頃を思い出すきっかけになればいいなと思います。