はじまりは篠山紀信でした。 From Editors No.897
From EditorsNo.897 フロム エディターズ
はじまりは篠山紀信でした。
雑誌編集者歴20年超、もっとも撮影をおともした写真家は篠山紀信さんです。
ブルータスで連載中の篠山紀信撮影『人間関係』の現場には、300回近く。
あの巨匠と! 宮沢りえさんの伝説的写真集『Santa Fe』の篠山さんと!
振り返ってみると、我ながらスゴイことです。
そして、300回近く撮影現場を一緒にしたにもかかわらず、変幻自在な技術力、一瞬でそこにいるモノたちを巻き込む現場力に、毎回刮目すべき発見があるのが、篠山紀信の写真力。
この篠山さんと中平卓馬さんが1976年「アサヒカメラ」誌上で繰り広げた『決闘写真論』という連載がありました。翌年、平野甲賀さん装丁で単行本化、伝説の名著です。
あくまで私見ですが、日本で一番有名な写真家でありながら、どう評価すべきか、評論家を悩ませ続けた(そしていまも悩ませ続ける)篠山紀信という鬼才の本質の一端にもっとも迫ったのが中平卓馬さんでした。
写真家同士のガチンコ勝負、そこから生まれる火花からは、素人でも理解る写真の撮り方、向かい合い方、そして観方の秘密がほとばしります。
今回、篠山紀信さんと、中平卓馬さんのご遺族にご快諾をいただき、伝説の名著のタイトルを冠した特集を作ることができました。
さて、いま注目の写真家たちは、どんな写真論を闘わせるのか。
どんな本質を吐露してしまうのか。
●杉江宣洋(本誌担当編集)