深い、深い、リリックのことば。 From Editors No.898
From EditorsNo.898 フロム エディターズ
深い、深い、リリックのことば。
最近、ピンとくることばは、歌詞から発見することが多い。ストリーミングサービスだと、歌詞も見ることができるから、この曲はそういうことを歌っていたんだ、と納得しながら読む。なかでも、ヒップホップの歌詞の感情的な爆発やスラングの使い方は特に面白い。ユーザーが自分なりに解釈して歌詞に脚注を加えていくサイト「GENIUS」(https://genius.com)は、歌詞に出てくる人名、別の曲からサンプリングしたフレーズなど、あらゆる人の解釈が追加されていくシステムで、なるほど! と思いながら、楽しむことができる。歌詞の裏を読む、という文化は、時代性やスラングを取り入れたヒップホップに特に顕著のよう。今回の特集では、ヒップホップのリリックに着目して、強いパンチラインをズラリと並べたページを作りました。そもそもニューヨークで生まれたヒップホップは貧困地域から発生したもので、現実の社会問題に対するアンチテーゼでもあった。昨年、ピューリッツァー賞を受賞したケンドリック・ラマーも、1曲の中に複数の登場人物が語るなど、物語性のある歌詞が特徴的。そこで、作家・西加奈子さんにお願いをして、彼の曲から2曲訳していただいた。西さんの解釈が加わった日本語での超訳を読むと、ケンドリック・ラマーの心の葛藤が、より私たちの心に深く訴えかけてくる。魂の奥底から叫ぶ彼のことばは、ぜひ誌面で体感を!
またリリックのことばのほかに、SF小説の冒頭文、対談文にみる名応酬、家訓のことばなど、ジャンルレスにことばの数々が詰まっているので、ぜひ自分の「ことば、の答え。」を探すきっかけにしてみてください。
●川端寿子(本誌担当編集)