Special Contents 心に残るレビュー本。
Special Contents 心に残るレビュー本。
観るべき旧作を選ぶための映画レビュー本を、選者と編集部がピックアップ。選書と一緒に、心に残った映画評の一節を抜き出しました。39冊を選んだ本誌の中から、ここでは5ジャンル5冊を紹介します。
●スターを読む
映画の中にはいつだってスターがいる。銀幕時代から現在までのスターを読む。
“ヤクザの代貸という役に、おやっさんは意外な小道具を使った。メガネをかけたのである。”
『博奕打ち』
『おこりんぼ さびしんぼ—若山富三郎・勝新太郎 無頼控』
羽目を外し、お茶目に生きた名優2人。
揃って、名優といわれた若山富三郎と勝新太郎の兄弟。2人の破天荒な生き方を、ともに付き合いの深かった山城が綴った一冊。初めて若山(=おやっさん)の家に呼ばれた時に“切れない縁になるなあ”と感じた、という話からそれぞれの“最期”まで、一気読み必至。読後はきっと2人の出演作品が観たくなるはずだ。(選・朝倉史明/雑誌編集者)
●映画を聴く
物語を盛り上げる、効果音とサウンドトラックという“音”にまつわる本。
“聴取しうる総ての音響設定を紙に書き起こしましたが、その作業中常に感じていたのは正に誘惑される官能でした。”
『アワーミュージック』
『ユングのサウンドトラック 菊地成孔の映画と映画音楽の本』
愛と官能に満ち溢れた映画“音”レビュー。
熱烈な映画音楽ラバーであり、自称中級程度のサントラマニア君だという著者の映画本ゆえ、内容のほとんどが映画における音楽/音に関するものとなっている。第1章はゴダール。音と映像のシンクロ率が0%かつ、意図的にズラしているのはなぜかということへの考察は面白い。読後に「音」視点で映画を観直したくなる一冊。
●映画を旅する
映画を辿る旅に出る。あの名シーンに身を置けば、再び興奮覚めやらず。
“この店に来たからには、ブラウン(タランティーノ)のマネして「ライク・ア・ヴァージン」談議をしなくちゃね。”
『レザボア・ドッグス』
『ファビュラス・バーカー・ボーイズの地獄のアメリカ観光』
1990年代後期のアメリカ暗黒ガイドの決定版。
ウェイン町山とガース柳下による、決して観光ガイドには出てこないディープハリウッド案内。巨乳映画のラス・メイヤー監督と悪趣味監督のジョン・ウォーターズにインタビューしたり、タランティーノのロケ地を巡ったり。博識かつ中2ノリの2人の会話に1ページ1度は爆笑しながら、ブラックなアメリカ映画史に触れられる。
●映画の裏の職人たち
スクリーンの裏側にはたくさんのドラマが潜む。映画の裏の職人たちに迫る。
“つぎのシーンで何が起こるか、絶対に予測できないようにつくったつもりだ。”
『鳥』
『定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー』
読んで観る。観て読む。という無限ループ。
サスペンス映画の巨匠監督ヒッチコックに、彼の作品を敬愛する監督トリュフォーが徹底インタビューした名著。一作一作について語られている内容は非常に深く、それぞれの作品をまだ観ていなくても面白く読める。いずれにせよ読み終わった後は、作品を観る(観直す)→読み直す→観直す…という楽しみが待っている。(選・朝倉史明)
●脇役本
主役が輝くのは、それを支える大多数の愛すべき名脇役の存在があるからだ。
“奇妙な色気ってのがあんだよ山麟さんには……。俺もいつかはあんな男になりたいもんだ”
『昭和残侠伝』
『ボンクラ映画魂 三角マークの男優(オトコ)たち』
脇役、チョイ役、殺され役の“東映紳士録”。
1960〜70年代の東映作品を偏愛する著者が編む、渾身の東映男優大辞典(総勢800人)。山本麟一の項にこんな逸話が。1人きりの年越し。深夜テレビで(高倉)健さんの『昭和残俠伝』が流れている。マッチョな肉体で悪役のすごみを見せる山本に魅せられ、オトコの 渋さとは何かを自問自答する。その果てに見た“杉作の夢”とは。(選・濵田研吾/編集者・ライター)