マガジンワールド

Special Contents 私の一皿。

心が落ち着く味を求めて、あの人はどこへ行くのだろう。
23人のおいしいもの好きに愛する一皿への思いを綴ってもらったページから、3軒をピックアップしました。


新宿御苑前
随園別館 新宿本店の“巻くやつ”
伊賀大介 スタイリスト
好きな中華屋は数あれど、オマエのソウルフードは何ぞや? って事ならば、間違いなく我が地元・新宿〈随園別館〉の“巻くやつ”一択である! この通称・巻くやつ、五目野菜炒めの上に薄焼き卵が載っており(パッと見オムライス)、それを大きめのスプーンでザクザク崩しながら、甘味噌を塗った薄皮で巻いてワシワシ食う、という至って直球なメニューなのだが、コレがホント美味(うま)く、いつ誰を連れてってもバッチリの、まるで九〇年代斎藤雅樹の如きエースっぷり。幼稚園の時から「節目は随園」という家族のルールがあり、もう三五年位通っているが、未だに本館があるのかも知らないし、この料理の正式名称も知らない。だが、注文時店員さんに「あいー、巻くやつねー」と返されている内は、知らなくていいと思っている。
●いが・だいすけ/衣装を担当した映画『SCOOP!』『何者』10月公開。
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「野菜の五目炒め卵焼きかけ」一二〇〇円(薄皮別料金/税抜き)。



野方
十八番(おはこ)の焼売
マッキー牧元 タベアルキスト
出会いはいつも突然やってくる。たまたま通りかかって入った店は、すすけた料理サンプル、油で輝く店内のメニュー、年季入りの胡椒や醤油入れと、町中華のお手本であった。だがメニュー見て驚く。餃子六〇〇円、焼売(シュウマイ)七〇〇円、ラーメン八〇〇円。強気の設定ではないか。そこで無難にラーメン餃子を頼み、一口食べて目を丸くした。皮も麺も手打ちなのである。餃子の皮も麺も、小麦粉の香りを放ちながら、モチッと弾む。通うようになってからのお気に入りは、焼売である。むろん焼売の皮も手作りで、薄いながらも存在感があり、よく練られた餡の豊かな肉汁と一体となりながら、口に攻め込んでくる。やや甘い味付けも、下品でいい。あとは辛子酢醤油をたっぷりつけて、はふはふとほおばり、笑うだけである。
●マッキー・まきもと/『味の手帖』顧問。あらゆる食べ歩きを布教。
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皮から手打ちする焼売。日曜のみ、セイロ二個分作られる。七〇〇円。



自由が丘
泰興楼(たいこうろう) 自由ヶ丘店のスーラータンメン
今日マチ子 漫画家
名物のジャンボ餃子目当てで訪れたお店ですが、ここで初めて知った「酸っぱくて辛い」酸辣湯麺(スーラータンメン)に夢中になってしまいました。辛さより酸味がやや強め。もっと酸っぱくしたいときはお酢を入れちゃいます。どんぶりの縁ギリギリまで入っているので、いつも運ばれてきたときは「やっぱり多いかも……」と弱気になりますが、辛い! 酸っぱい! と思いながらも完食します。卵と豆腐たっぷりで、ふんわりまとめられているのも食べやすい。ランチだとジャンボ餃子やデザートの杏仁豆腐もついて大満足です。いつもお腹がポンポコリンになるので、散歩をしながら帰ります。店内の雰囲気は重厚ですが、小さい子どもからお年寄りまで色んな年代の人たちが集まっていて、街の中華食堂のような感じ。そんな飾り気のないところも大好きです。
●きょう・まちこ/『百人一首ノート』『ぱらいそ』など著書多数。
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酸っぱ辛いあんかけ汁が麺によく絡む。一〇三〇円(税抜き)。


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町の中華

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