Special Contents 危険な本屋大賞2016
政治・お色気・サブカル。危険な本を数多く扱う3書店に聞いた、今年一番危なかった本は?
店主の中山亜弓さんは2016年、リチャード・マグワイアのグラフィック・ノベル『HERE』の虜になったという。「ニュージャージー州に住む家族の居間の絵が見開きでずっと続きますが、1957・1942・2007と年代は違う。読み進めると同じ空間に、パソコンのウィンドウのような異なった年代の断片が混在し始めます。一つの家族の物語を通して、紀元前から22175年までを辿りますが、どのページからでも読める」。2016年は繰り返し読んでも新たな驚きに満ちた本が多かった。ほかの2冊も見返すたび、新たな感慨が湧くという。
リチャード・マグワイア/著
趣味が旅行という渡辺さん。街歩きの最中に偶然、足を踏み入れた場所が遊郭跡だった。「なぜここだけ、異質な空気が流れているのか知りたくなって。全国の赤線跡もフィールドワークするようになりました」
遊郭=危険の概念を突き崩したい、とも話す渡辺さん。「暗いとか怖いという印象が強いけど、風俗で働く人にも日常という世界がある。知らないから危険だと思うんです。『昭和エロ本 描き文字コレクション』を“かわいい”と購入する人もいるから、本をきっかけに遊郭にも興味を持ってもらえると嬉しいです」
橋本慎一/著
共同運営者の榎本智至さんが最初に推すのが『さいはて紀行』。「温泉地の時間が止まったようなストリップ小屋や、刑務所内の美容室など。ふらっと訪ねて取材してしまう、著者・金原みわさんの胆力にまず驚いて。“珍スポット”の非日常性だけでなく、関係者の人柄も伝わってくる。きっと金原さんが、相手に寄り添って言葉を綴れる人だからです」。ほかにもカウンターカルチャーや社会運動の本を通して「未見の場所や時代の空気に触れられる本が興味深かった」と語る。
金原みわ/著