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都市生活者による、集合住宅に住むためのアイデア。 Special Contents BRUTUS No.915

Special Contents 都市生活者による、集合住宅に住むためのアイデア。

一軒家では体験することができないものが、集合住宅にはある。眺望、利便性、サービス……。その一方で、物件としての制約が多いのも事実。与えられた条件の中で、個性溢れる住まいをつくりあげた住まい手たちに聞いた、集合住宅を存分に楽しむためのメソッド。WEBではその中から1組の事例をご紹介。


idea01建築家しばりで物件を探す。

BRUTUS 915号:Special Contents
大きなガラス窓からたっぷりと光が入るリビング。目の前はルーフガーデン。高橋英二郎さんと中里真理子さんが暮らすのは、1986年竣工の集合住宅。丘の斜面に沿って建てられているので眺望も抜群。

欲しいイメージを追い求めて手に入れた理想の斜面住宅。

高橋英二郎 ●グラフィックデザイナー
中里真理子 ●スタイリスト

神奈川県川崎市
東京に程近い郊外の住宅街。家々の間を車で走った先に突如現れたのは、丘の斜面に建てられた、巨大な分棟型の集合住宅。グラフィックデザイナーの高橋英二郎さんとスタイリスト中里真理子さん夫妻は、そのモダンな外観に惹かれて、2年半前にこのマンションに越してきた。全14棟でおよそ80組ほどが入居する瀟洒(しょうしゃ)な集合住宅は、知る人ぞ知る人気建築で、たまたま運よく入居できたというよりは、長年の思いが実ったという方が正しい。

15年ほど前、サンフランシスコに住んでいた2人。帰国してから探したのは外国人向け住居のようなスケールの大きい住まい。都内近郊は難しいと思っていた矢先に出会ったのが、斜面の住宅を得意とする建築家、井出共治の集合住宅だった。それ以来、彼の建築を調べ、東京、神奈川に数軒ある物件を片っ端から見て回った。決めかけたのに寸前で売れてしまった、なんてこともあった。探し始めてかれこれ12年ほど経った頃、ようやく現在の物件と出会う。念願の住まいは、4LDKで住居専有面積165 m2 という理想的な広さ。上階なので眺望抜群なうえ、各住戸に専用庭スペースがあるので庭を育てる楽しみもある。

「住みたい家のイメージがはっきりとあったので、戸建てをイチから建てるより、建築家しばりで探し、完成されている物件がいいと思って。初めてここを見たときの高揚感はすごかった」と高橋さん。一方、中里さんはディテールよりも全体の雰囲気が好きかを重視する。それは近隣同士の関係性にもつながっていて、必ずしも同じ嗜好の住人ばかりではない中で、この建築が好きで住んでいることが共通項としてあるのは大きいという。

「かつて住んでいたマンションでは周辺に誰が住んでいるかわからなかった。でも、ここでは家に対する思いが重なる者同士が住んでいるので近所付き合いがしやすい。そこが建築家が造る集合住宅の魅力かなと思います」


高橋英二郎さん/中里真理子さん
profile
たかはし・えいじろう
なかざと・まりこ
共に1972年東京都生まれ。高橋さんは2019年よりフリーのグラフィックデザイナーとして独立。中里さんは、食やインテリアのスタイリストとして雑誌や広告などで活躍。双子の子供と2匹の猫と暮らす。
ブルータス No. 915

居住空間学2020

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