カルチャーの震源地”始まりの店”へ。 Special Contents BRUTUS No.935
Special Contents カルチャーの震源地”始まりの店”へ。
ロカビリー、パンク、アメカジ……。今となっては馴染み深い、海外由来のファッションジャンル。それらが日本に根づいた背景には、いつだって初めて取り入れたお店の存在がある。起源を求めて、いざ、“始まりの店”へ。
アメリカン・ライフスタイルショップの始まり。OUT POST
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2003年に閉鎖されたメキシコ工場で生産された〈リーバイス〉のデニムなど、ニューヴィンテージなアイテムもデッドストックで販売中。●東京都港区六本木4−10−11 小田切ビル☎03・3408・7513。11時〜19時。日曜・祝日休。
〈アウトポスト〉ほど時代を先取りし続けた店も珍しい。実際、アメリカ文化に強い憧れを抱いていた小田切明夫さんが、“〈リーバイス〉の501が中心にある生活”を提案すべく店を始めたのは、1973年だ。『POPEYE』はおろか『Made in U.S.A catalog』すら世に出ていない時代に、そのコンセプトを考えついていた先見の明には驚くしかない。さらに言えば、創業当初のショップカードには“NEW LIFE STYLE SHOP”とある。今では耳慣れた言葉だが、おそらく最も早い使用例だろう。
その先取りぶりは、小田切さんがアメリカで買い付けてきた商品にも表れている。カトラリーやコーヒーミルといった雑貨から郵便受けや家具まで、日本人には未知なる米国製品ばかり。あるいは、〈カーハート〉のワークジャケット、〈シエラデザインズ〉のマウンテンパーカなどを通じて、アウトドアをファッションに取り入れ“アメカジ”的なスタイルを、日本に根づかせた点も見逃せない。創業当時から変わらない山小屋のような店内では、今もその息吹を感じられるはずだ。
ウエスタンファッションの始まり。BAILEY STOCKMAN
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東京に現存する最古のウエスタンショップ。〈リオス・オブ・メルセデス〉〈ブラックジャック〉のブーツはカスタムオーダーもできる。●東京都港区北青山2−11−17☎03・3408・4763。11時~20時。水曜・木曜休。
〈トニー・ラマ〉〈リオス・オブ・メルセデス〉〈ブラックジャック〉。いずれもアメリカのウエスタンブーツブランドの名前であるが、これらを東京において広く知らしめたのが、1974年オープンの〈ベーリーストックマン〉だ。移り変わりの激しい東京ファッションに流されることなく、常にそこに在り続けた。実際、トレンディドラマブーム全盛期の80年代後半、浅野ゆう子を中心にして“サンタフェ・ファッション”が流行したときも、90年代に入って“渋カジファッション”に身を包んだ青年が徒党を組んで街を闊歩していたときも、そこにはいつもウエスタンブーツがあった。
そして、忘れてはならないのが、〈リオス・オブ・メルセデス〉を東京に初めて持ってきた店であるということ。アメリカ南部に拠点を持つそのブランドに信頼されるまでは時間がかかったそうだが、最終的に真摯な態度が伝わり、取引がスタートした。ウエスタンブーツを普段使いする。その価値観は、〈ベーリーストックマン〉がなければここまで浸透していなかったかもしれない。