From Editors No. 782 フロム エディターズ
From Editors 1
辛いから。
幸せだから。
ということは、旨いから。
できる限り集めた事前情報を手に、ライターと打ち合わせてみたものの、行ってみなけりゃわからないことだらけ。「辛い」けど「幸せ」なら、たぶん「旨い」ってことだよな。。。そんな頼りない自信、そして一抹の不安を抱えながら旅立つことにした。
バンコクで乗り換えた後、直行すると思われた飛行機は、インドのカルカッタを経由し、山間をスラロームするように高度を下げパロ空港へ。車に乗り換えて、すぐに向かった取材先は小学校。ちょうどお昼休みの時間で、ほとんどの子どもたちが、ご飯とエマ・ダツィ(唐辛子のチーズ煮込み)という組み合わせの弁当箱を広げていた。噂に聞いた通り、本当に子どもからお年寄りまでが唐辛子を普通に食べているし、聞けば365日3食、唐辛子料理なんて人もザラだという。取材1軒目にしてすっかり確信を得た取材チームは、「辛い」「旨い」「幸せ」の世界に魅了され、完全にカプサイシン中毒(?)に。色や大きさの違う唐辛子を、生、乾燥、パウダーと様々な使い分けで料理にしていくブータン料理。取材で毎日食べていたら、365日3食、唐辛子を食べ続けるブータン人の気持ちがちょっと分かったような気がします。
From Editors 2
苦手だけど好き…。
辛いものへの
割り切れない恋心。
「苦手」というのは体質的なもので、代謝が良すぎるのか、水芸のごとくダラッダラに汗が出るためです。一度開き切った毛穴はしばらく塞がることはなく、水やビールを飲んでも、そのままノンストップで体から噴き出すのが自覚できるほど。汗だくアラフォー男がいる食卓にはできれば同席したくないですよね(自分もそうです)。デートにはエスニックは選べません。あとお腹も弱いので、食後も心配……という。
でも「好き」。好きなんだもの、仕方ないじゃない。危険と思いながらも、メニューに付されている唐辛子マークの多いものについつい惹かれてしまう。結局頼んで食べて痛くて汗だくになってちょっと後悔して、なのに限りなく満たされている幸福感。そのまま流れ出てしまうとわかっていてもビールが進んで進んで。
脳科学的にいうと、辛いものを食べた時に分泌されるβ-エンドルフィンは、痛みの鎮静作用のほかに陶酔感をもたらすんだそうで。これがヤミツキの正体?もう脳がやられてるんだからどうしようもないですよね。
というわけで、刷り上がった今回の特集を見て誰より興奮しているのは、この私。担担麺! 麻婆豆腐! スパイスカレー! 想像するだけでじわっと幸せ汗。もはや仕事は手につきません。誰か、汗だくアラフォー男と一緒に辛いもの食べに行ってくれる人いませんか?