From Editors No. 784 フロム エディターズ
From Editors 1
男にとって、
自分にとって
大切なものとは何か。
8ヶ月をかけて、特集「松浦弥太郎の一流品カタログ」はゆっくりと完成したけれど、これは通常よりもかなり長い制作期間。どちらかというと、雑誌の顔をした書籍に近いのかもしれません。ある時、松浦さんは「よくぞここまでの量を書かせたよね、って感心されるくらいの『ブルータス』になるといいよね」と笑って話してくださったのですが、真に受けて相当量の執筆(おそらく想像以上)をお願いしてしまった。
この特集は、巻頭のエッセイ集、『僕の一流品カタログ』(松浦さんが選ぶ80の一流品/もちろん文章も執筆いただきました)、憧れの人4名との対談など、たっぷりの全80ページ。松浦さんと「男にとって大切なもの」をあらためて定義することができたように思います。忙しい『暮しの手帖』の仕事の合間をぬって、執筆いただき、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。
男にとって大切なものは、夢、希望、ロマン、そして学びである。表紙にも書いた言葉ですが、改めてここにも残したいと思います。夢やロマンといった、最近忘れられがちな、口にするとなぜだか恥ずかしくなってしまう言葉を、僕らがもう一度取り戻せるために。そしてそのきっかけとして、この「男の一流品カタログ」が機能してくれたなら。さあ、男たちよ!
From Editors 2
僕らには一流品が不足していました。
あのレストランは評判そこそこらしい、あの映画は評価まっぷたつみたい…その場に行って、この目で見て、自分で判断しなくても、うっすら「わかった気になれる」のは、とっても時間の節約ですね! ……じゃなくて、うっかり出会ったものに心動かされて、その後の原動力、原体験になる経験を遠くにしてるのでは? と。
頭に引っかかるものは、人に聞く前に自分で調べたうえで、聞いて答え合わせして、彼我の考えの差を実感しつつ、自分の定見を重ねていく。自分が若手だった頃は、評価はいちばん後に来るものだった記憶がある。どう思う? と尋ねるときには「自分はこう思ってる」が必要でした。今、自分でも、答え(的なもの)を先に見ちゃうから、なんにも根付かない。
最初の打合せから8ヶ月あまり。集まっては話し合い、一流品について考えてきました。好きなもの、は自分が好きであればいいけれど、一流品は、一人だけでも賛同者が必要です。だから、説明しなくちゃならない。そのために言葉を磨いて、考えを整える。一流品とは「人にすすめる価値を見つける」こと。それ、やる価値ありました。
一流品は手に入らなくてもいい。一流品は「それがあること」を知っているだけでいい。いつか手で触れたい。いつか誰かとその話をしたい。「そこに人格があるもの」と、松浦さんは一流品の十の条件の中に書いています。僕らには一流品が不足していました。不必要だと見つめていなかったそれらには、存在する強い価値があることをあらためて知ることになりました。
ありがとう、松浦弥太郎さん。楽しかった。