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いろんな奇跡。 From Editors No.846

From EditorsNo.846 フロム エディターズ

いろんな奇跡。

奇跡といっても、スピリチャルな話しではありません。でも、これって、ほぼ、奇跡だよなあ、と思うことが、居住空間学の取材をしていると、まま、あります。

1964年に建てられ、今も文京区春日の地にある「川口アパートメント」は、その存在自体が奇跡みたいな集合住宅です。そもそもが、昭和の劇作家王・川口松太郎が成した財を、息子の川口浩が、惜しみなく、普通では考えられないほどに惜しみなく、つぎ込んだからこそできた建物であり、その姿を変えずに「残ってきた」ことも、ひとつの奇跡といえるのではないでしょうか。

「古いこと」だけが価値ではないけれど、「長い年月を耐えて残ってきたものには、残ってきたなりの強さや理由がある」と以前、骨董の取材で聞いて、納得させられたことがあります。「川口アパートメント」にも、その、残ったものの持つ「強運」や規格外の迫力みたいなものを感じずにはいられませんでした。川口松太郎の娘、國重晶さんにお会いしてお話を伺えたのも奇跡! 身内にしか語れない、貴重なエピソード。ぜひ本誌で読んでいただければと思います。

そしてもうひとつ…… デザイナーの小林恭さん、小林マナさん夫妻の家に住む猫、マロンちゃん(写真)。何が奇跡かって、その、愛らしさと台形に近いフォルム!!

ふたりの家のインテリアは、猫と暮らすことを前提に考えられたものなのですが、「猫対策」が生んだとは思えない、美しさにうっとりでした。時には猫との暮らしが家づくりの出発点になることも。家を取り巻く物語は、住む人の数だけ、数限りなくあり、その面白さを今年もぎゅっと、詰め込んであります。

 
●︎︎︎岡野 民(本誌担当編集)
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2階のリビングの一角に設けられた、明かり取りの窓の前が、マロンちゃんの定位置。 photo_Tetsuya Ito


ブルータス No. 846

居住空間学2017 記憶を重ねる部屋。

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ブルータス No. 846 —『居住空間学2017 記憶を重ねる部屋。』

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