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大好きなワークウェアを自ら着て、“カッコいい”を追求する現役70歳。 From Editors No.912

From EditorsNo.912 フロム エディターズ

大好きなワークウェアを自ら着て、
“カッコいい”を追求する現役70歳。

ちょうど1年前。2019年春夏ファッション号で、「ブルータス繊維新聞」と銘打って、「サステイナブル」という言葉と真面目に向き合った。限られたページで表現するにはあまりに大きなテーマだったし、決して100点満点ではなかったようにも思う。ただ、その時は絶対に取り上げなければいけないテーマだと考え、何かに突き動かされるように取り組んだ。

いつからか展示会に行けば、「サステイナブル」はアイテム紹介の枕詞のように語られるようになった。その会場ではプラスチックカップで飲み物が配られ、クリアケースに入ったプレスリリースはエコバッグに入れて配られた。一体全体何がしたいの? と思ってしまう。取り組む姿勢が大事なのも分かっている。でも、モヤモヤしたものが頭の片隅から離れない。

今回の特集で〈HAKUÏ〉デザイナーの小野塚秋良さんとお会いして、話をしているうちに、頭はみるみるクリアになった。〈ZUCCa〉時代から並行してレストランやホテル向けにユニフォームを作り続けて30年。売れない服を過剰に作るのではなく、誰もが欲しがる服(在庫)を切らさない商売。資材の調達から流通まで無駄はない。健全そのものである。確固としたデザイン哲学と、地球にストレスフリーな物作りで、ビジネスも成功を収めている。本当のサステイナブルってこういうことじゃなかったっけ?

発想の転換というより、小野塚さんご自身は極めて自然体なのだ。底抜けに明るくて、毎日が楽しそう。本誌の写真を見ていただければ一目瞭然である。最高のワークライフバランスを確立している小野塚さんが作るワークウェアは、カッコいいに決まっているのだ!

●鮎川隆史(本誌担当編集)
BRUTUS 912号:From Editors
BRUTUS 912号:From Editors
1年間に新しくデザインするのは、せいぜい10型程度。良いデザインは定番として残し、在庫し続けるという。あの、マルタン・マルジェラやジャン・トゥイトゥと同時期にデビューし、活躍し続けるデザイナーでありながら、自らを職人と呼ぶ奥ゆかしさにも人柄が滲む。


ブルータス No. 912

WORK WEAR 働く服は美しい。

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