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男たちの『平凡』物語。 Special Contents BRUTUS No.841

Special Contents 男たちの『平凡』物語。

60年代からアイドル雑誌としての色を強め始めた『平凡』。男たちはこの時代の『平凡』をいかに語るのか?コラムニスト、プロインタビュアー、古書店店主など、千差万別の切り口から読み解かれる、それぞれの『平凡』の姿とは。

仁義なき昭和芸能史としての『平凡』黒歴史を探せ!

昭和の芸能雑誌の記事って、今とルールが全然違って面白いんですよ。雑誌自体が強かったっていうのもあると思うんですけど、「タレントのことを何だと思っているんだ!」って記事が多い。しかも、実話誌系だけじゃなく、一般誌でもまかり通っていたんですよ。『平凡』もそう。僕が見つけた中で一番ヒドかったのが、1968年の11月号。萩本欽一さんの密着取材記事が載っているんですね。そこに「お願い」っていう注意書きがあって、こう書かれているんです。「新居に早朝から電話をしたり部屋に押しかけたりしないでね。ちょっぴりノイローゼ気味の欽ちゃんのお願い、聞いてやってね」って。まず、「聞いてやってね」っていう上から目線が気になるわけですが(笑)、それ以上にヤバイのがその隣。普通に欽ちゃんの新居の住所が部屋番号まで描かれているんですよ。この頃はタレントの住所が公開されることも珍しくはなかったけど、ノイローゼ気味の人のを教えちゃダメだろ!(笑) そういう昭和ならではの記事を発見するたび、ニヤニヤしてしまいます。
吉田 豪
吉田 豪
プロインタビュアー
よしだ・ごう/ニコ生内で有料ブロマガ『豪さんのチャンネル』を配信中。



古書店店主が教える、最も高いプレミア『平凡』とは?

『平凡』に関して言うと、うちの店で人気が高いのは、70年代から80年代のもの。人で言えば、新御三家、山口百恵、松田聖子、たのきんトリオ、中森明菜あたりでしょうか。やっぱり、世間的にその頃のアイドル界が一番面白かったってことなんでしょうね。値段は平均4,000〜5,000円くらいです。一番高いので言うと、今うちに置いてある中では1978年の4月号。38,000円です。なんでかって言うと、山口百恵の水着の大きなポスターが付いているんですね。こういう付録がちゃんとあるとやっぱり高くなります。逆に安くなってしまうのは、ページが切り抜かれているとき。これは『平凡』や『明星』以外ではほとんどないんですが、おそらく当時の所有者だった女子中学生が切り抜いて下敷きかなんかに挟んでいたんでしょう。買っていくのは、主に当時を知る50〜60代。でも、最近はあの頃のアイドルのCDが復刻されているからか、若い人も買いに来ます。そうやって休刊しても新しい読者を開拓し、読み継がれているってすごいですよね。
鎌田俊一
鎌田俊一
〈荒魂書店〉店主
かまだ・としかず/アイドルグッズを扱う神保町の〈荒魂書店〉店主。



60年代ポップ少年が語る、悲しき14歳の“性”春床屋白書。

小学6年生だった1960年の秋、僕は坂本九の「悲しき六十才」って曲をきっかけにして、ポップス歌謡全般に目覚めるんですね。『平凡』は、彼らについての情報を得るために読み始めました。ただ、親は「そんなの勉強にならない」って買ってくれなくて、床屋の待ち時間に貪るように読みました。音楽情報から映画情報、あと連載小説のちょっとエッチな描写に妄想をたくましくしたりして(笑)。ただですね、床屋で僕の担当が美人のお姉さんだったんですよ。最初は嬉しかったんだけど、中学に上がるとシャンプーをするときに彼女の胸が肘とかに当たるわけですよ。すると、身体的な反応が出るようになって。それが恥ずかしくて、おじさんが髪を切ってくれる別の店に変えました(笑)。それと同時に『平凡』を読むのも卒業しましたね。


60年代ポップ少年
60年代ポップ少年
ポップ史観で60年代を辿る亀和田さんによる自伝的エッセイ。上で語られた話も収録されている。亀和田武著/小学館/1,650円。


亀和田 武
亀和田 武
コラムニスト
かめわだ・たけし/著作に『夢でまた逢えたら』『この雑誌を盗め!』など。



ブルータス No. 841

平凡ブルータス

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