まだまだあります、オススメ伝統建築。 Special Contents BRUTUS No.862
Special Contents まだまだあります、オススメ伝統建築。
前半に登場した16件だけでは、語り尽くせないニッポンの伝統建築の魅力。もちろん、建築家たちには、ほかにもオススメを聞いてあります。京都、奈良を中心に、千葉、広島まで。この8件を加え、いざ伝統建築の旅へ。
千畳閣
せんじょうかく
秀吉のスケールを感じる壮大な柱の空間。
●1587年 広島県廿日市市
嚴島神社内に豊臣秀吉が建てた大経堂。畳857枚分の大空間には板壁も天井板もなく、武骨な太い柱梁が露出したワイルドな建築だ。「海と嚴島神社を見晴らす立地と、大量の柱が立ち並ぶ大空間の迫力に秀吉のスケールの大きさを感じます。秀吉は殿様から平民のことまで理解する政治センスと剛胆さで、国全体に力を与えるような新しい空間を構想していた人だとわかる貴重な建築です」(藤原徹平)
笠森寺 観音堂
かさもりじ かんのんどう
絶景かな、ここにしかない四方懸造。
●1028年建立 千葉県長生郡
房総の山並みを一望できる岩の上に立つ、日本で唯一の「四方懸造(しほうかけづくり)」の観音堂。61本の長い柱で支えられ、すっくと聳(そび)える姿は「そこに建築があることで、周りの自然も素敵に見える」(武井誠)、懸造の魅力を存分に味わうことができる。国指定重要文化財。笠森寺は、784年に伝教大師最澄上人が開基したと伝わる天台宗の古刹(こさつ)。十一面観音が本尊であることから「笠森観音」と呼ばれ親しまれている。
西芳寺
さいほうじ
苔むす庭が織り成す緑の世界。
●8世紀 京都市西京区
行基の開創とされる臨済宗寺院。通称苔寺。1339年に造園に優れた夢窓国師が再興した。35,000 m2 に及ぶ庭園は約120種の苔で覆われている。古都・京都の文化財として世界文化遺産登録。「中学生の時に訪れて、建物でなく庭園に衝撃を受けました。風通しが悪く、水や湿気が多いという、一般的には悪い環境とされる場所ですが、苔の生育には最適です。それを見渡す限りの苔の庭園として成立させています」(西沢大良)