グールドを聴く、グールドを読む、原摩利彦が選んだグールド作品。 Special Contents BRUTUS No.916
Special Contents グールドを聴く、グールドを読む、原摩利彦が選んだグールド作品。
特集の表紙にも登場する稀代の天才ピアニスト、グレン・グールド。彼の音楽はなぜ人を惹きつけるのか。音楽家・原摩利彦さんが選ぶグールド作品5作を入り口に、その魅力に迫る。WEBではアルバム3作、著作2冊を紹介!「アルバムはすべてピアノソロから選んでいます。ソロを聴いてグールドに興味を惹かれたら、協奏曲やオーケストラとの共演作などに手を広げてもらえたら幸いです。(原摩利彦)」
『ハイドン:後期6大ピアノ・ソナタ集』
今回グールド作品を聴き直した中で、最も驚かされたアルバム。偏見かもしれないけれどハイドンには“ザ・クラシック”みたいなイメージがあってちょっと聴きにくい存在だったのですが、そんな古くささが一切感じられない素晴らしい作品に仕上がっています。特に1曲目のピアノソナタ56番第1楽章の冒頭部分。ため息が出る美しさです。とても「現代的」
な響きのするハイドン。グールドのハミングが遠くでほのかに聞こえますが、ピアノと声のバランスが映画の中の音楽のように錯覚します。録音技術の進化も大いに貢献していると思います。グールドの晩年に録音されたアルバムですが、最初にゴールドベルクを録音したときの才気煥発な若き天才性と、ブラームスの間奏曲に感じられる彼独特の優美さとが、見事に調和している素晴らしい演奏だと僕は感じています。僕が今、一番よく聴いているアルバムです。ソニー・クラシカル/2CDs 限定盤/1,485円。
な響きのするハイドン。グールドのハミングが遠くでほのかに聞こえますが、ピアノと声のバランスが映画の中の音楽のように錯覚します。録音技術の進化も大いに貢献していると思います。グールドの晩年に録音されたアルバムですが、最初にゴールドベルクを録音したときの才気煥発な若き天才性と、ブラームスの間奏曲に感じられる彼独特の優美さとが、見事に調和している素晴らしい演奏だと僕は感じています。僕が今、一番よく聴いているアルバムです。ソニー・クラシカル/2CDs 限定盤/1,485円。
『ブラームス:間奏曲集』
若く聡明なグールドがブラームス晩年の作品を弾いています。とにかく「Op.118 No.2イ長調」が美しい。椅子のノイズが左チャンネルから聞こえ、サーというヒスノイズはやや右チャンネルに多い、そんなことも含めて好きです。グールドのアルバムは高音が左にあって、不思議に感じます。ソニー・クラシカル/SACD/2,800円。
『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」・第14番「月光」・第23番「熱情」』
8番の第3楽章の軽快さと23番第2楽章の重厚な和音、超有名ソナタが収録された大変興味深いアルバムです。ベートーヴェンはほかにも有名な後期ソナタの演奏や完璧なスタッカートで始まるピアノソナタ1番などがありますが、聴き比べもしやすいのではないかと思い選びました。ソニー・クラシカル/SACD/2,800円。
『グレン・グールドは語る』
初出はローリング・ストーン誌。ビートルズなどについて語った発言などもあり、読みやすい入門書。「ジョージ・セル事件」はNetflixのドキュメンタリーのようにスリリングです。『グレン・グールド著作集1&2』(みずず書房)への助走。グレン・グールド、ジョナサン・コット著、宮澤淳一訳。ちくま学芸文庫/1,100円。
『グレン・グールド 未来のピアニスト』
『孤独のアリア』やその他の語りによって作られたグールドのある種の孤高なイメージに、ピアニストでもある著者らしい視点から光を照射している作品。現代的な視点もあり、グールドの演奏への洞察も素晴らしく、ディスクを聴きながら読み進めるのも面白いのではないでしょうか。青柳いづみこ著。ちくま文庫/1,200円。
原 摩利彦●ピアニスト
はら・まりひこ/1983年生まれ。音楽家。ポストクラシカルから音響的サウンドスケープまで、静謐(せいひつ)な音像世界を現出させる若き旗手。最新アルバム『PASSION』は6月5日発売予定。http://marihikohara.com/