マガジンワールド


From Editors No. 797 フロム エディターズ

From Editors 1

ベーシック流行りの反動が
少しずつやってきました。

「へぇ、そんな服着るんだ」と言われなくなって久しい。それこそ、洋服に興味を持ち始めた中学生の頃から20代後半まで、いろんなスタイルを模索したし、当時は失敗を恐れなかったんじゃないだろうか。いま見たら赤面してしまうような変な格好も、思い切り楽しんでいたと思う。「それ、似合ってるね」が最高の褒め言葉だったし、そんなこと言われようもんなら有頂天だった。

知識や経験が伴ってくると、ブランド物や上質な素材の服が欲しくなってくる。そうなると、お財布と相談しながら吟味せざるを得ない。定番と呼ばれる服が増え、そしてクローゼットの中には黒、白、ネイビーとオリーブカーキばかりが並ぶようになった。よく、不景気になるといろんなことが保守的になると言われる。洋服の流行もしかりだ。ここ数年のベーシック流行りは心地よかったのだけど、本来は色々欲張りたいタイプなので、退屈に感じられるようになってきた。それがここ1年ほどの個人的な気分の流れ。

今回のファッション特大号はいろんなファッションの在り方を提案したいと思いました。人それぞれの好みがあり、スタイルの変遷があり、モードの解釈がある。1人1人のDRESSING RIGHT(正しい着こなし)を見つけて欲しいという思いで、このタイトルをつけました。気分的にもスタイル的にも、ブレイクスルーを試みて欲しいので、特集はとても力強いモノクロ写真で始まります。ぜひ、新しい自分を見つけてください。

 
●鮎川隆史(本誌担当編集)
写真は、チャールズ・ヒックス著「男のきこなし」の原題。あとがきで訳者の穂積和夫が良い言葉を残しているので一部抜粋したい。「本書の原題“DRESSING RIGHT(正しい服装)”はつまり自分に相応しい、あるいは自分に似合う服装という意味で、服装に関する基本的な原則である」。
写真は、チャールズ・ヒックス著「男のきこなし」の原題。あとがきで訳者の穂積和夫が良い言葉を残しているので一部抜粋したい。「本書の原題“DRESSING RIGHT(正しい服装)”はつまり自分に相応しい、あるいは自分に似合う服装という意味で、服装に関する基本的な原則である」。



From Editors 2

モード=流行を取り入れたい。
自分にふさわしいさじ加減で。

「今季はトレンドの潮目にある気がします。いままで学んできたベーシックにプラスαを加えて自分なりのモードを楽しみたいですね。多少の“装う”勇気を持って……。」
展示会、打ち合わせ、取材の冒頭。特集テーマ『あなたにふさわしいモード』について、スタッフや関係者、取材相手にそんな説明をしていきます。「ふむふむ、なるほど」「うちのブランドが目指しているのはまさにそういうこと」など、概ねいい反応が。他人に話を繰り返す分だけ、自分の中でも理解が固まってきます。ただ、「はて、モードってなんだろう」というのは、頭の片隅にずっとひっかかっていたことでした。

そんななか、恒例の数珠つなぎ企画、『私の知ってるモードな人』で、さまざまな人に話を聞きました。シンプルに「あなたの考えるモードとは?」という質問を投げかけると、やはり答えは多種多様。ですが、多くの人が“モードとは生き様である”というような考え方をしていたのが興味深い。
モード=流行の最先端。つまり自己否定である、という強い考え方もあるようです。ただ個人的には、自己肯定をした上でのアップデート、ぐらいのさじ加減が気分です。年齢を重ね培ってきた(だろう)ベーシックは大切にしながら、新しいものへの興味は、いつまでも持ち続けていたい。積極的に。

今シーズンは本当に服が面白い。スタンダードを易々と飛び越えるようなエッジイで極端なアイテムも実にたくさん。自分が積み上げてきたスタイルに、そんなトレンドのエッセンスをひとつ、ふたつ。いや、みっつ。で、自分のモノにしてしまう。最初はその冒険が気恥ずかしいかもしれません。でも、それも、ファッションの大いなる楽しみ方だと思うのです。

 
●星野徹(本誌担当編集)
数珠つなぎがライフワークのフリーエディター宮田恵一郎。夕陽を浴びながら、いざ大物取材へと。
数珠つなぎがライフワークのフリーエディター宮田恵一郎。夕陽を浴びながら、いざ大物取材へと。