マガジンワールド


From Editors No. 824 フロム エディターズ

From Editors 1

時空の歪みに身を委ねたら、
想像以上に楽しい

おろしたての服を着ていたある日、「古着っぽいね」と先輩に言われた。なんという褒め言葉だろう。だって、自分に馴染んでいるということだからね! しかし、そんなことが二度、三度…。決して褒められていないことに気付く。アフロヘアにヨレヨレのネルシャツを着ていた10年前。簡単にイメージは払拭できない。古着が大好きという思いは変わらないけど、ファッション担当としては複雑な気持ちである。

1年ほど前の取材で、「ファッションはサブカルチャーに成り下がった」という言葉を耳にした。トレンドの細分化とか、携帯電話やゲームへの傾倒など、理由を並べ立てて解説されたけど、本当だろうか? それは“事実”かもしれないけど“事実”ではないと、気持ちがモヤモヤしていた。某ファッションデザイナーが、古着屋さんで様々な時代の音楽やアートの話に花を咲かせてるのを見かけたとき、古着を材料に、カルチャーの特集を組みたいと思った。

古着屋さんをまわれば、いまも若者が溢れている。老舗から、新世代の店、町のリサイクルショップまで想像以上に面白い。どの店も選んだ服を独自の価値観で値付けし、店作りをしていた。約20年前のお宝デニムブームとは、ちょっと様相が違うのだ。着る人も主観だけを頼りに好きな時代にタイムトリップしている。時空が歪んで見えるほど、それぞれの“好き”を突き詰める自由な空気。古いものを扱っているのに、店も人もキラキラして見えた。

やっぱり、「古着っぽいね」と言われたい。

 
●︎鮎川隆史(本誌担当編集)
1870年頃のフランスで着られていた国民衛兵の制服が187500円。時の流れが止まったかのような錯覚に陥る。ショップガイドにもイラストで掲載。
1870年頃のフランスで着られていた国民衛兵の制服が187500円。時の流れが止まったかのような錯覚に陥る。ショップガイドにもイラストで掲載。



From Editors 2

俺的古着はアメカジヴィンテージ。
あなたに響く古着はいったい!?

誤解を恐れずいえば、アラフォー世代にとって“古着”とは1940~80年代初頭までのアメリカ古着をさすのではないでしょうか。自分もアメカジ古着ブームに高校生時代を過ごしたドンズバ世代。リーバイス、リー、ラングラーの三大デニムに、カレッジTやスウェット、軍モノ、さらにナイキのエアシリーズなど。古ければ古いほど、珍しければ珍しいほどよし。イエローステッチ、BIGE、赤耳、66リベット……雑誌の解説を頼りに、古着屋巡りに熱を上げました。希少なヴィンテージをいかに安く(当時、市場価格は沸騰気味でありました)手に入れるか。古着の楽しみ=アメカジを掘ること。そんな時代もあったなあ、と懐かしく思い出します。

時巡って2016年。久々に見た古着の世界は大きく変わっていました。1930年代のスーツで紳士を気取る。1990年代のポップなブルゾンをドラマの主人公のように着こなす。1970年代のサーフブランドで固め当時のサーファーになりきる。これすべて20代の青年の話。他方、フランスやイギリス古着を扱う店や、90年代のストリート、モードブランドの古着に特化した店も増えています。アメカジ古着一辺倒の時代と比べ、より多様な古着が店を彩り、それを集め、着て、楽しんでいる人たちがいる。古着に対する人の価値観や興味も細分化している印象です。

「この服のある時代に生まれたかった」「古着なんだけど古くない。新しいんです」…最近の古着好きたちは古着を新しいモノと捉え、「なぜ、この時代にこのデザインが採用されたのか」「この服の時代のカルチャーをもっと知りたいんです」…古着をきっかけに、その時代背景や文化を学びたいと口にします。時代や国の数だけ古着があり、服の数だけストーリーがあります。いまは多種多様な古着に気軽に触れられる時代。お宝掘りも楽しいですが、それだけではない“新しい古着”の楽しみ方。あなたも見つけてみませんか。

 
●星野 徹(本誌担当編集)
あの頃僕は若かった。66、BIGE、セカンドなど青春の思い出デニムたち。この特集をきっかけに再び着ようと試みたものの、なにぶんサイズが変わって着られない。そもそも着倒しすぎて生地がヘタって着られない。ヴィンテージは着てナンボだと、自分では思うのですが。ちなみにいまはヴィンテージモデルの復刻にプレミアムがつく時代なんだとか。
あの頃僕は若かった。66、BIGE、セカンドなど青春の思い出デニムたち。この特集をきっかけに再び着ようと試みたものの、なにぶんサイズが変わって着られない。そもそも着倒しすぎて生地がヘタって着られない。ヴィンテージは着てナンボだと、自分では思うのですが。ちなみにいまはヴィンテージモデルの復刻にプレミアムがつく時代なんだとか。