マガジンワールド

Special Contents ぼくらの子育てルール。

子育てに正解はありません。親子の数だけ、育て方が存在します。各業界で活躍する30人の“子育てルール”を紹介した本誌から、ここでは4名分を紹介します。


岡崎裕子
●陶芸家
長女3歳

小さな子どもが両手でしっかり持たないと落としてしまう、程よい重さに仕上げてあるのもポイント。小丼のほかに飯碗や茶碗もセットで。岡崎さんが作る子どもの器は、代官山BONTONにて販売中。
小さな子どもが両手でしっかり持たないと落としてしまう、程よい重さに仕上げてあるのもポイント。小丼のほかに飯碗や茶碗もセットで。岡崎さんが作る子どもの器は、代官山BONTONにて販売中。

「離乳期から娘には
陶器や木の食器を使わせています」

生後6ヵ月頃の離乳期から、岡崎さんが娘のために作った、陶器のお碗や湯飲みを使っている。プラスチック製のものを一切与えないのは、本物の素材感や、落としたら割れてしまうことを伝えたいからだ。「縁が少し欠けてしまったので、漆で金継ぎをして大切に使っています」。また、このお碗の形状を考えることで、意外な食育にも繫がったという。「スプーンに食べ物をこぼさずのせられるように器の側面を内向きに作り、縁は開いて汁物を飲みやすくしました。高台は広めに取って、幼い子どもでも倒さずに使えるように安定感を出したんです。食べこぼさなくなりましたし、上手に食べられたことで、本人のやる気が出て、今までより食が進むようになったのが嬉しかったですね」


1976年東京都生まれ。〈イッセイ ミヤケ〉を退職後、陶芸家・森田榮一氏に弟子入り。30歳で神奈川県横須賀市に陶房を構え独立。各地で個展を開催。
 

岡部文彦
●スタイリスト
長男8歳・次男3歳

「なぜ買わない方がいいのか理由を示せば、3歳児でも意外と納得してくれるもの」と岡部さん。葛藤を乗り越えておもちゃを戻せたら「偉いね」と褒めることも忘れない
「なぜ買わない方がいいのか理由を示せば、3歳児でも意外と納得してくれるもの」と岡部さん。葛藤を乗り越えておもちゃを戻せたら「偉いね」と褒めることも忘れない

“駄々こね”にも
気長に付き合う。

子育てしていると避けて通れない、おもちゃ売り場の“駄々こね”。岡部さんは3歳の次男が手にしたおもちゃを自主的に戻すまで帰らない。「無理やり抱っこしてその場を離れたほうがラクだと思うんですが、後々面倒なことになるのはわかっているし、本当に必要なものかどうかを判断する力をつけるいい機会だと思うので。僕が反対する理由を話し、あとは彼がおもちゃを戻すまで気長に待ちます」。長男も同じようにやってきたからか、周りの子のほとんどが持っている携帯ゲーム機も欲しがらない。「周りに流されず、サッカーシューズなど、より自分に必要なものを欲しがる。そんな姿に感心しています」


1976年生まれ。スタイリングのほか、アウトドアメーカーの企画開発など幅広く活動。農園芸ワークウェア〈HARVESTA!〉のデザインも手がける。
 



相場正一郎
●〈LIFE〉〈LIFE son〉オーナーシェフ
長男6歳・長女2歳

スイスの名ブランド〈IWC〉のアクアタイマー。子どもと遊んでいる時にキズがついてしまったが、それもいい思い出として修理には出さず、そのままに残してあるという。
スイスの名ブランド〈IWC〉のアクアタイマー。子どもと遊んでいる時にキズがついてしまったが、それもいい思い出として修理には出さず、そのままに残してあるという。

世代を超えて、
父から息子へ譲りたいもの。

親から子へ受け継いでほしいものがたくさんあるという相場さん。その中の一つがこの〈IWC〉の時計だ。「オーバーホールさえしっかりしていけば2世代3世代使えます。将来は息子に譲りたいので、3年前の彼の誕生日に購入しました。今は自分用として使っています」。相場さんがそう考えるようになったのは、料理人として修業していたイタリア時代にある。「ヨーロッパでは、父親から息子へ、高価な時計や眼鏡などを譲り受ける文化があってずっと憧れていたんです」。いつ譲るのかと尋ねると、「息子が自分から欲しいと言った時」。いつかその日が来ることもまた、楽しみの一つとなっている。


あいば・しょういちろう/1975年生まれ。2003年イタリアンレストラン〈LIFE〉、12年〈LIFE son〉をオープン。本の出版やプロダクト制作なども手がける。
 

田中千絵
●デザイナー
長男11歳・次男7歳

この日はワッフルと生野菜のサラダを弟、ソーセージと目玉焼き、スナックエンドウなど旬の野菜のボイルを兄が担当。手に持っているハーブは家庭菜園でとれたもの。
この日はワッフルと生野菜のサラダを弟、ソーセージと目玉焼き、スナックエンドウなど旬の野菜のボイルを兄が担当。手に持っているハーブは家庭菜園でとれたもの。

休日の朝食は、子どもたちにおまかせ。

「料理は、“おいしく食べる”というゴールに向けて道のりを考える作業。段取りと遂行力のトレーニングになるので、休日の朝食は子どもたちに作ってもらっています」。メニュー構成から調理、食材の買い物までお任せ。はじめは長男主導だったが、兄の姿を見て次男も負けじと頑張っていて、火を使わない料理は彼が担当する。「段取りを考えて冷たくてもおいしいおかずから先に作ったり、彩り良く盛り付けたり。どんどん腕を上げています。クリームパンみたいなまあるい手で一生懸命料理する姿は、微笑ましくて、たくましい。その光景とおいしい朝食に幸せな気分にさせてもらっています」


たなか・ちえ/武蔵野美術大学卒業。〈ストライプファクトリー〉取締役。デザインとその周辺の仕事、子供向けワークショップも手がける。伯父は田中一光。
 


ブルータス No. 778

親と子

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