マガジンワールド


From Editors No. 782 フロム エディターズ

From Editors 1

辛いから。
幸せだから。
ということは、旨いから。
「子どもがおやつに唐辛子を食べているらしいよ」「料理するときに唐辛子を野菜のように使うらしいよ」と聞いたのがブータン王国に目を向けたキッカケ。しかし、裏取りをしようにも、あまり詳しい情報が見つからない。それまでに自分が持ち合わせていた知識は「3年くらい前に国王夫妻が来日して、GNH(国民総幸福量)というスローガンが話題になってたよな。国王の髪型はオールバックで…」程度。

できる限り集めた事前情報を手に、ライターと打ち合わせてみたものの、行ってみなけりゃわからないことだらけ。「辛い」けど「幸せ」なら、たぶん「旨い」ってことだよな。。。そんな頼りない自信、そして一抹の不安を抱えながら旅立つことにした。

バンコクで乗り換えた後、直行すると思われた飛行機は、インドのカルカッタを経由し、山間をスラロームするように高度を下げパロ空港へ。車に乗り換えて、すぐに向かった取材先は小学校。ちょうどお昼休みの時間で、ほとんどの子どもたちが、ご飯とエマ・ダツィ(唐辛子のチーズ煮込み)という組み合わせの弁当箱を広げていた。噂に聞いた通り、本当に子どもからお年寄りまでが唐辛子を普通に食べているし、聞けば365日3食、唐辛子料理なんて人もザラだという。取材1軒目にしてすっかり確信を得た取材チームは、「辛い」「旨い」「幸せ」の世界に魅了され、完全にカプサイシン中毒(?)に。色や大きさの違う唐辛子を、生、乾燥、パウダーと様々な使い分けで料理にしていくブータン料理。取材で毎日食べていたら、365日3食、唐辛子を食べ続けるブータン人の気持ちがちょっと分かったような気がします。

 
●鮎川隆史(本誌担当編集)
写真はブータンエアラインズの機内食。カレー2種と、サイドディッシュにエマ・ダツィ。思わずおかわりしてしまう美味しさ! © Tetsuya Ito
写真はブータンエアラインズの機内食。カレー2種と、サイドディッシュにエマ・ダツィ。思わずおかわりしてしまう美味しさ!
© Tetsuya Ito


 

From Editors 2

苦手だけど好き…。
辛いものへの
割り切れない恋心。
「辛いの好き?」と聞かれたら、「苦手だけど好き」と答えるようにしています。

「苦手」というのは体質的なもので、代謝が良すぎるのか、水芸のごとくダラッダラに汗が出るためです。一度開き切った毛穴はしばらく塞がることはなく、水やビールを飲んでも、そのままノンストップで体から噴き出すのが自覚できるほど。汗だくアラフォー男がいる食卓にはできれば同席したくないですよね(自分もそうです)。デートにはエスニックは選べません。あとお腹も弱いので、食後も心配……という。

でも「好き」。好きなんだもの、仕方ないじゃない。危険と思いながらも、メニューに付されている唐辛子マークの多いものについつい惹かれてしまう。結局頼んで食べて痛くて汗だくになってちょっと後悔して、なのに限りなく満たされている幸福感。そのまま流れ出てしまうとわかっていてもビールが進んで進んで。

脳科学的にいうと、辛いものを食べた時に分泌されるβ-エンドルフィンは、痛みの鎮静作用のほかに陶酔感をもたらすんだそうで。これがヤミツキの正体?もう脳がやられてるんだからどうしようもないですよね。

というわけで、刷り上がった今回の特集を見て誰より興奮しているのは、この私。担担麺! 麻婆豆腐! スパイスカレー! 想像するだけでじわっと幸せ汗。もはや仕事は手につきません。誰か、汗だくアラフォー男と一緒に辛いもの食べに行ってくれる人いませんか?

 
●中西 剛(本誌担当編集)
表紙の唐辛子の絵は江戸の平賀源内の筆。『番椒譜』と名付けられた唐辛子図鑑では、さまざまな唐辛子を形や色で分類して精緻に描いています。源内先生も辛いもの好きだったのね!
表紙の唐辛子の絵は江戸の平賀源内の筆。『番椒譜』と名付けられた唐辛子図鑑では、さまざまな唐辛子を形や色で分類して精緻に描いています。源内先生も辛いもの好きだったのね!