マガジンワールド


From Editors No. 795 フロム エディターズ

From Editors 1

いまのひとが、つぎのひとを生み、
つぎのひとが、いまのひとを刺激する。

ファッション、アート、ビジネスなど、様々なジャンルで明日を切り開く次世代の才能に注目した今回の特集。ただ、彼らもゼロから何かをつくりだしているわけではありません。現在のスタンダード、既存の価値観を踏まえて、それに何か新しい解釈をプラスしたり、あるいは思い切って覆したり。つまり、“いま”があるから“つぎ”を生み出すことができるわけで。それは今回取材をした“つぎのひと”全員に当てはまることでした。

例えば「演劇」。
ブルータスが“つぎのひと”として取り上げたのは、表紙にも登場している劇団「マームとジプシー」の作・演出家である藤田貴大さん。今回、現在の演劇界を代表する演出家・蜷川幸雄さんとの対談が叶いました。

藤田さんは上京してきた当時、蜷川さんや野田秀樹さんの舞台を観ては、自分が持っていないものを見せつけられて激しい悔しさを感じていたそうです。そして、追いつくためには、大先輩たちが寝ている時間にも自分は演劇のことを考え続けるしかないと決意し、睡眠障害にまでなったのだとか。その執念が、彼のいまの演劇をつくっていることは確かでしょう。そして、その藤田さんの舞台を蜷川さんが初めて観たとき、蜷川さんは自分の生理的な感覚をなぞり「俺と同じ種族だ」と思ったといいます。

蜷川幸雄がいたから生まれた藤田貴大の演劇は、いま逆に蜷川幸雄を刺激している、ということ。50歳の年の差などは関係なく、そこにあるのは、得難い共感とライバル心を手にした2人の幸せな演劇人の姿だけでした。そして2人の共同作業によるプロジェクトが動き始めているというニュースも! この対談、きっと貴重な記録になると思います。

昨年11月に体調を崩し、現在も入院生活中の蜷川さんは、対談のために病院から車いすで来てくださいました。一昨年に藤田さんと出会ったとき「あぁ、ずっと観察して待っていたら、会えるもんなんだなと思った」という蜷川さん。やっと会えたね、ですよ。
昨年11月に体調を崩し、現在も入院生活中の蜷川さんは、対談のために病院から車いすで来てくださいました。一昨年に藤田さんと出会ったとき「あぁ、ずっと観察して待っていたら、会えるもんなんだなと思った」という蜷川さん。やっと会えたね、ですよ。


●中西 剛(本誌担当編集)

From Editors 2

つぎのひとはもうそこまで来ている。

ここ最近、新しい才能と出会う機会が多かったのがこの特集を作るキッカケだった気がする。ブルータスという雑誌で編集することで人に誇れることをいくつかあげろと言われると、“才能と出会える”ということを真っ先にあげると思う(あくまで個人的に)。ただ、10数年、この界隈で編集者として仕事をさせてもらっていて、ちょっと思っていたことがあった。“プレイヤー”が変わらない。第一人者は圧倒的な実力があり、そうそう揺るぎはしないのはわかる、が、それにしても、各ジャンルでそれを脅かすような新しい才能がもう少し出てきてもいいのではないか。そう思い続けてきての、新しい才能との頻繁な出会い。“つぎのひと”の声が聞こえてきた。なぜ、今? その答えの足がかりをこの特集の中に挟み込んでいる。“言葉”のつぎのひと、最果タヒさんと彼女が最も影響を受けたという作詞家の松本隆さんとの“言葉”を挟んでの対談。多くの才能を身近で見てきた野村訓市さんが教えてくれる「つぎのひとの条件」。現代社会の有り様を指し示す学術書『なめらかな社会とその敵』の著者であり、ニュースアプリ〈SmartNews〉の創立者である鈴木健さんのつぎのひと論。アメリカの新しい文化様式を読み解いた『ヒップな生活革命』の著者、佐久間裕美子さんが紹介するフューチュロロジー(未来学)のスターたち。ファッション、音楽、アート、ビジネス、建築、演劇、…、26ジャンルのカテゴリーの“つぎのひと”が次々と紹介される間で発せられた彼らの思いや考えから、その答えが垣間見られる。つぎのひとはもうそこまで来ている。そう実感できただけでも、自分にとっては満足な一冊となった。

フューチュロロジーのスターのひとり、ジェイソン・シルバ。本誌では、限りない未来の想像の仕方を教えてくれる。
フューチュロロジーのスターのひとり、ジェイソン・シルバ。本誌では、限りない未来の想像の仕方を教えてくれる。


●伊藤総研(本誌担当編集)